※第48話:Love(&Destiny!).37






 帰りの車内ではなんと、ナナとこけしちゃんは遊び疲れて眠っちゃったんです。

 気まずいかと思いきや、意外に薔と醐留権は、息が合った。







 花子を預けてあるので、起こされたナナとずっと起きていた薔は、ナナ宅の前で降ろされたのでした。

 こけしちゃんはこのとき、熟睡していた。
 無理もない。


 「醐留権先生、ほんとありがとうございました!」
 仮眠をとったので元気回復したナナは、ぺこりとあたまを下げた。
 「ありがとな、疲れたろうから、ゆっくり休んでくれ。」
 薔もきちんと、御礼を述べると、


 「いや、君たちこそ、ほんとうにゆっくり休んでくれ。これからもこういった機会があることを、私は心から望むよ、では、おやすみ。」
 にっこり笑った醐留権は、徐行の速度でベンツを走らせていったのだった。





 「…ナナ、あのホテルはどうやら、音漏れしてたみてーだ。」
 「はいーっ!?」
 音立てちゃってたほうなんで、今気づいたみたいですが、薔はいつもによって、落ち着き払っていて、
 ナナさんは、“おともれ”について辞書を引くべきか、思案していた。








 ピンポーン

 ナナ宅のチャイムを鳴らす。


 「あら、ナナ、薔くん、おかえりなさい、お疲れさま。」
 すぐに玄関のドアを開けたナナ母は、チョコボールを頬張っていた。

 「お母さん、ただいま!」
 「花子をありがとうございました。」

 順を追って、ひとつのセリフみたいな挨拶をした後、

 「待っててね、今、花子ちゃん連れてくるから。」

 にこっと笑ったナナ母は、奥へと向かっていった。




 すぐに登場した花子は、

 「ワン!」

 大喜びで、ご主人さまへと飛びついた。



 「花子、いい子にしてたか?」
 薔はやさしく、花子をなでなでですね。

 「花子ちゃんは本当に、躾がきちんとできてるのね。偉いわ。」
 ナナ母は感心ひとしきりの様子で賞賛すると、花子についてのあれやこれやを、薔に返しました。


 「今は、お父さんは?」
 やっぱりナナより先に、ナナ父についてを薔が尋ねると、
 「雅之はね、花子ちゃんとお別れするのが嫌で泣いてるもんだから、恥ずかしがって出てこないのよ。見送ると余計に悲しくなるって、言い張っててね。」
 溜め息混じりではあるが、ナナ母は笑って答えた。


 「やさしいおかたですね、」
 このとき薔はまた笑ったので、

 (おーい、ナナ、写真はどうなってるの?)
 チョコボールを頬張る母は、こころで娘を急かした。


 「こちらお土産なので、お母さんとお父さんで、召し上がってください。」
 しかもいつの間にか、薔はナナ宅にもお土産を用意していたんです。


 「すごいですね!いつの間に!?」
 ナナは、感心しまくり。


 「そんな、わざわざご丁寧に、ありがとね、薔くん。私はお菓子が、主食より好きなのよ。」
 そんでもって、珍しいお菓子に興奮気味のナナ母は、表情変えずに頬を赤らめた。




 デジカメの写真をいくつか見せたりしてから、ナナと薔と花子は、本格的な帰路に就いたのだった。



 帰路の途中、薔は笑って言った。

 「花子は、おまえの両親にも懐いたな。」

 と。

 なんだかキュンとしたナナは、幸福感がくすぐったかった。












 「おおお…!花子ちゃん…!」
 母が戻ると、やっぱりリビングで父が号泣しており。

 「雅之、いずれは合体するんだから、辛抱しなさい。早くてほぼ2年よ。」
 「だってさぁ…!」
 泣きじゃくるかと思われた、ナナ父だったが、

 「薔くんからお土産を頂いたんだけど、演歌聴きながら一緒に食べる?」
 愛する妻のこのお誘いで、


 「ハニー!もちろんだよ!」


 瞬く間に、元気になった。





 「しっかしあの子は、ほんといい子だなぁ!」
 「そりゃそうよ。ナナがあそこまでになった子よ?いい子に決まってるじゃない。」
 夫婦はこんな会話を交わしながら、寝室へと向かっていった。
 お菓子食べながら、演歌聴くためにね。

[ 542/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る