※第48話:Love(&Destiny!).37






 壁を隔てた時間を少し、巻き戻します。


 醐留権に話があると、打ち明けられた薔は、

 「その前に、風呂入ってきてもいいか?」

 と、言ったんです。




 するとですね、驚いたことに、醐留権はこう提案したんですな。

 「だったら、一緒に入らないか?」







 「…なんの因果で、俺とあんたが一緒の風呂に入んだ?桜葉と入れ。」
 薔はまぁ、落ち着いて、もっともか?の意見を返したのだが、
 「すまない。確かめたいことがあるんだ。一緒に入らせてくれ。」
 醐留権は懇願したのである。



 「まぁ、男同士だ、なんも問題ねぇか、」
 薔が了承しちゃったんで、こちら様も一緒のバスタイムと相成っちゃったんです!

 こけしちゃんが聞いたら、気絶するシチュエーション。









 「暮中、君はさすがだね、」
 「それよりあんたは、眼鏡を外して前を隠せ。」

 とか言いながら、バスルームに入っちゃいましたわ。









 ――――――…

 こちら様も隅々まで洗い終え、湯船に浸かったわけなんですが。

 「なぁ、暮中、」
 「あ?」

 とうとう、醐留権の告白が、始まった模様です!


 「私もね、この年だ、いくつかの恋愛を経て、ここにいるんだよ。」







 「まぁ、それもそうだな。その外見だしな。」
 至って落ち着いて、返した薔だったが、

 「で、実は、今でも思い出せる相手がいるんだが…、」
 醐留権は、両手を握りしめ、額に当て、俯き告げた。


 「その子が、君ほどではないんだが…、君にどこかしら、似ているんだよ…、」


 と。





 「…俺は男だぞ?」
 「そう…、そうなんだ、その子もれっきとした、男の子だったんだ、」

 ちょっ、醐留権先生!?


 「あんた、実はホモなのか?」
 「違う、同性を愛したのは、ただ一度、それきりだ。」

 醐留権はくるしげに告げたが、薔はいったん黙った。



 「すまない。初めて見たときから、似ていると思った、でも」
 「ちょっと待て。」

 そんでもって、次に薔は、諭すように言いました。


 「あんたは、俺の女の親友の彼氏だ。」


 ってね。




 「ごもっともだ。」
 顔を上げた醐留権は、納得する。

 「その時点で既にややこしいんだが、そいつにだ、昔の恋人に似てると言われた俺のこの気まずさが、あんたにはわかるか?」
 立派に述べた薔へと、
 「いや、申し訳ない。私は言った張本人だ、あまりよくわかってはやれない。」
 醐留権は、正直に答えた。



 「まぁ、こんなこと滅多にねーだろうからな。」
 「それもそうだな。」

 このやりとりの後、しばしの沈黙は続いたが、




 「桜葉のこと、好きなんじゃねーのか?」


 ふと、薔が口を開いた。




 「桜葉のことは、ほんとうに愛している。ただ、告げないと、前に進めない気がした。」
 「なら、いいが、」
 雰囲気が、ちょっとだけ厳かになっている。


 「そいつとは、なんで別れたんだ?」
 薔は問いかけを続けて、
 「あの子は…、羚亜(れいあ)は、私の生徒だったんだが、ある日忽然と、姿を消したんだ。」
 醐留権は、真剣に答えた。


 「…あんた、けっこうな恋愛してきたんだな。」
 「まぁ、そのせいか、未だに吹っ切れずにいたんだが、」

 そして、醐留権は言ったのでした。

 「もう、完全に吹っ切れたよ。暮中、君のおかげでもある、ほんとうにありがとう。」










 「なら、この後、部屋割り変えたほうがいいな。」
 「あぁ、そうだな。」
 これはナナとこけしちゃん、作戦立てなくても良かったのでは!?


 「上がるか、」
 薔はこう言ったのですが、

 「暮中、すまない。私は眼鏡がないと、ほとんど何も見えないんだ。掴まっていってもいいか?」
 醐留権は、こんな風にお願いしちゃいました。


 「あんた、入るときは普通だったろ?ほんとに吹っ切れたのか?」
 「入るときは、必死だったんだ。吹っ切れてなければ、こんなこと言えないさ。」

 おそらく薔と醐留権は、友情を深めたのだと思われる。

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