※第48話:Love(&Destiny!).37






 「あれ?景色がさっきと違うような…、」
 そりゃ至極もっともで、ナナはキョロキョロし始めた。

 「薔は、どこだろう?」
 と、右見て左見て歩いていると、


 ドンッ!


 誰かにぶつかったのだ。




 「いたたぁ…、」
 肩を押さえてうずくまるナナの頭上、

 「ごめんよ!大丈夫だった!?」

 男性の声がした。




 おもむろに顔を上げたナナの目の前、

 「いやぁ、申し訳ない。よそ見してたら、ぶつかっちゃって、」
 気まずそうに謝っているその男性は、なかなか爽やかなイケメンだった。
 大学生、くらいか。



 「いえ、わたしもキョロキョロしてましたんで、すみません。」
 ナナも立ち上がって、あたまを下げる。

 「いやいや、怪我はない?それよりどこかで、会ったことない?」
 「あ、怪我は大丈夫です。会ったことは、ただの一度もないですよ。」
 とかいう会話をしていると、



 「おい、」



 必死になって探していたひとの、かなり不機嫌そうな声がした。


 「なにやってんだ?おまえは、」




 (ぎゃあ――――――――――――っ!!)





 感動的(運命的?)な再会か、急いでナナは薔へと駆け寄る。

 「すみません!探しましたよ!」
 「俺のが、探したぞ?」
 このやりとりの直後、


 「あああああっ!」


 なかなか爽やかイケメンが、叫びを上げた。



 ナナと薔がふたりして雰囲気の違う視線を送ると、

 「薔くんだよ……!」

 めちゃくちゃ瞳をキラキラさせたなかなかなその男性は、振り絞るように言ったんです。



 「・・・・・・・・・・・・、」
 薔は無言になってから、

 「えっ!?あの、」
 ナナを引っ張って歩き出した。


 「ちょっ、ちょっと待ってよ!」
 慌てたなかなかくん(←だんだん雑になってないか?)は、ふたりの前にまわり込んだ。


 「あのね、薔く」
 「おい、」

 ……………はい?

 「だれが目の前に立ってもいいと言った?」

 ……ぇぇえ!?


 (おわぁあ!出たぁ!)
 ナナは歓喜に満ちた。


 そのとき、めげずになかなかは言ったのだった。


 「僕、君の大ファンなんです!」

 ってね。




 「声のトーンを抑えろ。」
 「あ、はい…!」
 言われた通りに抑えた、もう雑にしようがないその男性は、続ける。

 「いつもパパから、薔くんの話を聞いててね、テレビにも出たって言うから、見せてもらったんだけど、めっちゃくちゃかっこいいから、ファンになっちゃって…!」
 「あ?」
 薔は落ち着いておりますが、やたら興奮気味に持ち出された、


 その、パパとは!?


 「ごめん、申し遅れたけど、僕は横科 祐(たすく)って言うんだ。パパはわかるよね?」




 なんと、横科先生だった。





 「ふーん、」
 まったく動じていない薔は、自身よりけっこう背の低い横科の息子こと・祐の、あたまを見ていて、
 (うーん、よこしな…、よこしな…、ヨコシマ先生なら、知ってるんだけどなぁ…)
 首を傾げるナナは、間違った覚え方に惑わされていた。


 「本物もう、すごすぎるじゃん…!」
 喜び勇んだ祐は、下げていたバッグから、メモ帳とペンを取り出して言った。


 「サインください…!」





 メモ帳とペンを、堂々たる態度で受け取った薔は、ナナに言った。

 「おまえが書け。」




 「なぜに、わたしなんですかぁーっ!?」
 「おまえ、こないだ俺の名前書こうとしてたろ?いい機会じゃねーか。」
 結局、祐のそれらは、ナナの手へと及びました。


 (あれれぇ?僕、薔くんの直筆が良かったんだけどなぁ。)
 唖然とする、祐。



 「一画でも間違えたら、どうなるかわかってんだろーな?」
 「うぎゃあ!精一杯書きます!」

 いささかふるえる手ではあったが、ナナは愛のちからで、正しく書ききった!





 「よく出来たな、偉いぞ?」
 「えっ、そんな、えへっ。」
 薔はナナのあたまを、なでなでしております。


 ナナの書いたサイン(?)とペンは、キョトンとしている祐の元へと無事に返された、薔の手によって。



 「あ、ありがとう、ございます……」
 ちょっとおぼろげに、礼を述べた祐だったが、

 「俺の女が書いた、俺の名前だ。大事にしろよ?」
 「はいっ…!」
 すぐさま、瞳を輝かせた。


 「時間食っちまったな、戻るか。」
 「はい!」
 歩き出したナナと薔を見送りながら、


 「いやぁ、僕、ああいう性格って憧れちゃうよ、男として。」


 祐は、うっとり。




 そこへ、

 「ちょっ、祐!いきなり迷子になるなよ!」

 大学の仲間たち(男女混合)が、息をきらして駆けつけた。



 「おまっ、こんなとこで、なにやってたの!?」

 この質問に、

 「王子様の彼女に、サインもらってた…」

 ほくほくと答えた、祐。



 「えええええ!?つまりは、お姫様ってこと!?」

 仲間たちは、びっくり仰天だった。

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