※第48話:Love(&Destiny!).37
ようやく起きたふたりは、軽く朝食(ナナはしっかりか?)を摂ってから、支度に取りかかりました。
よくよく見てみると、荷物はちょいと多めですな。
そんでもって、花子についてのあれやこれやなんかも、きちんと用意されてたんです。
「行くぞ。」
「ワン!」
「はい!」
それでは、出発です!
出発と言っても、みんなして、やたら通い慣れた道を歩いていた。
ナナは自分のバッグだけを持ち、あとの荷物は全て薔が持っております。
30分足らずで着いた、その場所とは?
ピンポーン
ナナ宅だった。
ガチャ―――――…
「あら、ナナ、薔くん、花子ちゃん、おはよう。」
すぐに玄関のドアを開けたナナ母は、とんがりコーンを食べていた。
「お母さん、おはよう!」
「おはようございます。」
「ワン!」
順を追って、ちゃんと朝のご挨拶です。
「ナナ、ちょっと久しぶりね。どう?濃厚なやつは。」
「お母さん!?そこだけ濁すと、余計に恥ずかしいよ!」
相変わらずの母に対し、真っ赤になる娘。
「それより、食べる?美味しいわよ?」
「なんかうまい具合に、長い爪みたいになってるよ!?」
身を乗り出す、ナナ。
一個頂いてから、同じようにやってみた。
(楽し〜い!)
ナナさん、君、ほんとはいくつだ?
「お母さん、花子に必要なものは、こちらに揃えてあります。詳しくは電話でもお話しましたが、メモも一応入ってはいます。」
「あら、薔くんは偉いわね。ほんとナナより、年上みたい。」
花子についてのあれやこれやは、無事、薔からナナ母に手渡され、
(えへへっ。そりゃ、このひと、もんのすごくしっかりしてるもん。)
ナナは、いつもによって素直すぎるのか、めちゃくちゃ喜びに満ちた。
「本日は、お父さんは?」
ナナより早く、薔がナナ父について尋ねると、
「あぁ、雅之はね、花子ちゃんが来るのを楽しみにし過ぎて寝付けなくて、今朝方眠りに就いたからまだ寝てるのよ。犬になりたかったくらい、犬が大好きなひとでねぇ。」
ナナ母は、少し呆れたようだが笑って答えた。
「素晴らしいおかたですね。」
薔も笑って言ったので、
ナナ母は、
(おーい、ナナ、この笑顔、写真撮って送りなさい。)
と、こころで要求した。
「では、今日明日、花子をよろしくお願いします。」
「任せてちょうだい。安心して、楽しんできてね。」
上のやりとりから、明らかになったことがあります。
どうやら、初めてのダブルデートなのに、お泊まりのご様子です!
まぁ、せっかくの夏休みだし。
そんなこんなをしているうち、
キィ
ナナ宅の前に、立派な黒ベンツが横付けされました。
「ああっ!こけしちゃん達だ!」
はしゃいだナナは、母に向かって、
「お母さん!花子ちゃんをよろしくね!行ってきます!」
手を振ると駆け出した。
「こけしちゃ―――――ん!」
薔もナナ母に微笑み会釈をすると、ナナに向かって歩いていきました。
「…ほんと、いい子だわ。ナナ、写真よろしくね。」
見送るナナ母は、こう呟いたんだとさ。
「おい、おまえは、俺を置いてくな。」
「ひぎゃあ!すみません!」
慌てふためくナナだったが、薔と一緒にベンツへと乗り込んだのでした。
「おはよぉぉうぅ。ナナちゃぁん。」
「おはよう!こけしちゃん!」
「暮中、今日は色々と、すまなかったな。君の提案で、ほとんど手配までしてもらって、」
「そんなことねーよ。なんだかんだで、車出させちまったしな、」
とかまぁ、熱き挨拶を交わしてから、
「私は運転が好きみたいでね、むしろ嬉しいよ。では、出発しよう。」
本格的に、いよいよ出発です!
走り出したベンツが、門のあいだ見えなくなってから、
「じゃあ花子ちゃん、おばちゃんと遊ぼうか?」
「ワン!」
はしゃぐ花子を連れて、ナナ母は家に入った。
リビングに向かう途中、
「ハニー、おはよう…、」
寝ぼけ眼のナナ父が、パジャマのまま姿を現した。
「おはよう、雅之、遅いわよ。もうナナ達、出発しちゃったわよ?」
「だってさぁ…、って、花子ちゃんじゃん!」
花子を見た途端、ナナ父の目はぱっちりとして、
「いつ見ても、可愛すぎるなぁ!天使だよ、まるで!」
父は、花子に抱きついた。
「そりゃ雅之、ご主人様が天使だもの、ほんと。」
「はい……?」
腕を組む妻と、キョトンとする夫。
「そう言えば、雅之、薔くんがあなたのことを“素晴らしいおかた”だと言ってたわよ?」
「ええ!?そんな、あの子のほうがよっぽど素晴らしいおかたじゃん!」
「ワン!」
ナナ父の言葉に対し、なにげに花子は賛同した。
ナナ宅も、楽しい二日間を送れそうな気配!
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