第5話:Game(+Spread).3
学校です。
「今になってみて眠たいんだけど、どうしたらいいんだ?」
少しおなじみになりましたが、ナナは机に突っ伏していました。
……………………は!!
(こここんなことしてる場合じゃないぞ!今日こそはあのひとの正確な時間の計測を、なんとしてでも阻止せねば!)
ナナは意気込んでみせた。
そのとき、
「ナナちゃぁん。」
だれかに声をかけられたのだ。
(え?)
ナナが振り向くと、
「おはよぉぉうぅ。」
そこにはニコニコ顔の、女の子が立っていた。
(こ、この子……………!)
黒いおかっぱあたま。
つぶらな瞳。
ちいさなお口。
まさに、やまとなでしこ…………………!
「こ、こけしちゃん………………!」
「えぇ?」
ナナはとっさにその子を、日本の伝統文化“こけし”に例えていた。
(なんだかとってもかわいい女の子が、能力封じ込めてから一番最初に声をかけてくれたよ〜!)
最も肝心なひとを抜かしているが、いいのか?
「見れば見るほどにアナタは、こけしちゃんだよ〜!」
ナナはうっとりする。
「すっごくかわいいよ、本当に!」
ナナがこけしちゃんの手を握ると、
「そんなにあたしぃ、かわいいかなぁ?」
こけしちゃんは、はにかんだ。
「うん!かわいいよ!今わたしに対して絶対的な権力をかざしてるあのひとさえいなければ、ついて行きたいくらいかわいいよぉ!」
「エヘヘぇ。」
これがナナとこけしちゃんの、運命の出会いである。
「こけしちゃん、アナタのことを少し、教えてほしいよわたしは!おそらくそれは、辞書に載ってないから!」
「いいよぉぉ。」
こけしちゃんは、楽しそうに笑う。
「あたしはねぇ、腐女子なのぉ。」
……………ふじょ?
「ふ、“ふじょし”って、なに?」
お決まりのパターン、のようですが。
「今度、教えてあげるねぇぇ。」
…………………え!?
お、教えてくれるの!?
うぉぉぉぉぉお……!!
感動!!
このときのパターンは、覆された。
「ありがとう!こけしちゃん!アナタは本当に、やさしいね!」
「ありがとぉぉ。」
ナナにとってこけしちゃんはこのとき、バファリンに等しかった。
「じゃあぁあたし、これから妄想するからぁ、席に着くねぇ。」
「うん!」
いや、ツッコむとこ、一カ所あったよ?
「またねぇぇ。」
こけしちゃんは、ニコニコ顔を振りまき、席に戻っていった。
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