第5話:Game(+Spread).3




 以下。ナナ父、以外にもナイスですよ。



「お前、あの傘とってもいい匂いがするんだが、どこで買ったんだ?」

 …………………は?

「この雨の中もいい匂いが消えないとは、すごい傘だな。」



 ……………………!!



「ちょっとお父さん、これからコンビニに行くから貸し」

 バ―――――――ン!!

 勢いよく、開いたドア。

 びくびくぅ!
 何!?
 お父さん、ノックの忘却のほかに、なんか悪いことした!?



「か、傘…………?」



 息をきらすナナは、ドタバタと階段を駆け降りる。

「ナナ、威勢がよくて、立派よ。」
 観点のずれた褒め方をするナナ母のまえを通り過ぎ、



 たどり着いた、玄関!


 はぁはぁ
 勢いのあまり、息をきらすナナ。




「どうなってるの?玄関まで、あのひとに支配されてるよ?」




 バッ!

 傘を素早く手に取り、抱きしめるナナ。

「おーい、ナナ、その傘貸してくれ〜!」
 呑気に階段を降りてきた父に向かって、一言。



「この傘使うくらいなら、逆に濡れてってください!」




 …………………えぇえ!?

 だれぇ!?
 うちの娘を、こんなに反抗的にしたやつはぁ!?


 ナナはそのまま、階段を駆け上がっていった。





「ハ、ハニー………」
「なに?雅之(まさゆき)。」
 ナナ父とナナ母の会話、呼び方にちからの差を感じさせられます。
「ナナはどうしたのだろうか?まさか悪魔とかいうやつに、ひどい目に遭わされてるんじゃあ………………!」
 うん、それ否めない。

「雅之、あれはまさしく“恋”よ。」
 え!?
「こ、鯉って、淡水魚の?」
 やはり親娘。
「日本語はややこしいわね。」
 ちなみにナナ母は、雅之より15センチ、背が高かった。







 ナナ、マイルームにて。

 ジーッ。

 ナナは一所懸命に、傘を見つめていた。

「ああ、この傘見れば見るほどに、真っ赤だよ。」

 血、みたいだな…………。

「明日もあまり行きたくないけど学校だから、もう寝るべきなんだけど、今はこの傘を一晩中見ていたい気分だよ。」

 しかし、傘は、どこにも行きませんよ?
 傘はね。

「いっそのこと抱きしめて眠りたいけど、そんなことしたら変態像、丸描きだしなぁ。」
 どうしよう…………。

「おぉお…………!なんで気づくの、いつもわたしは遅いんだぁ!」
 悶えるナナ。



 よって、この夜。
 ナナは一睡もできずに、387歳、生まれてはじめて傘のまえで、悩み悶えていた。

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