第45話:Love(&Action!).36






 「うーん…」
 なんだか目の前が明るくなって、ナナはゆっくりと目を開けた。

 「……あれ?」
 まったく見覚えがない部屋の、ベッドの上に寝かされている。


 「ここはどこだろう?」
 キョロキョロし出したナナの隣で、
 「やぁ、お目覚めかい?」
 椅子に腰掛けた貴族っぽい男が、彼女に手を振った。
 しかも、にっこりと。


 (えーと、誰だろ?まぁ、いいや。とにかく帰ろう。)
 そう思ったナナさんは、勢いよく起き上がったんです。

 「おわぁあ…!」
 とたんに、目にはたくさんの、薔薇の花が飛び込んできました。

 「薔薇じゃ―――――ん!」
 現状にはお構いなく、ベッドから飛び降り、はしゃぎ出すナナ。

 「薔薇がお好きかい?」
 「はい!大好きですよ!それよりその質問、なんだかとっても恥ずかしいんでやめてほしいよ!」

 ………………え?

 リリュークはしばし、キョトンとした。

 「いや、それよりこのお美しい薔薇さん、すこし頂いて帰ってもいい?すんごく似合うから、玄関とかに飾りたくて!」
 「ぇえ!?」
 予想外の反応に、驚愕のリリューク。

 「うーん、でもね、薔薇はいろんな人々に愛されてるから、こんなに買い占めたら困る人がたくさんいるよ?なに考えてるの?もう二度としないでほしいよ。」
 「えええ!?」
 だれかさんの影響力は、計り知れないナナです。


 「なに言ってんだよ!?」
 そのときリリュークは、けっこう叫んだ。

 「僕こそが薔薇だ!ご覧!まさしく薔薇のようだろう!?」







 …――ありえないにもほどがあるわ!!!!!!




 「もうほんとうに、そういう冗談だけはやめてほしいよ!わたし帰る!」
 静かな怒りに満ちたナナは、ドアに向かって走り出した。
 そしてドアを少し開けて、足を踏み出そうとしたのだが、

 「待ちなよ、」

 グイ――――――…

 リリュークに、腕を掴まれた。


 「これから僕と、めくるめく夜なんだよ?さっさとベッドへ、横になれ。」




 ……へぇぇえぇ?


 ドン引いてばかりのナナは、手を引かれてベッドへと連れて行かれる。

 ドサッ―――――…

 やがて上に、乗せられた。


 「僕がたっぷり、可愛がってあげるよ。」
 ナナにまたがったリリュークは、ヒラヒラしたものがついたシャツのボタンに手を掛ける。

 その瞬間、

 「プッ、」

 ナナは吹き出した。


 「あははは。言うことがぜんぜん様になってないから、笑いたくもないのに笑っちゃうよ。」




 呆気にとられるリリュークの下、ナナはちょっとの間笑っていたが、

 ピタリ

 ふと真剣な表情になって、けっこう叫んだんです。



 「だれが上に乗っていいと言ったの!?」










 「君、自分の置かれてる立場、わかってるの?」
 「そんなんどうでもいいよ!今ね、大事なセリフお借りしちゃったから、ますます会いたくなっちゃったんだよ!」
 「えええ!?」

 ちょっとリリュークはのけぞったが、

 「では、こうしよう。」

 笑ってナナに乗ったまんま、提案しました。

 「君が大人しく私に従えば、あの人間を王への生け贄に、しないであげるよ。」





 …――――生け贄?

 ナナのこころには、なんだかヒヤリとしたものが流れ込んできて。

 「どうせ、血液によって翻弄されてるだけだ。僕が君をまっとうなヴァンパイアに、引き戻してみせよう。」


 笑いながら、リリュークは言った。





 「…ちがうよ、」
 そう告げたナナの表情は、今にも泣きそうだった。

[ 503/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る