第45話:Love(&Action!).36






 「頃合良さそうな子が、何人かいるね。」
 「うん。」
 などとホスト同士で会話をしている、メインルームにて。

 キラキラしたなかで、何人かの女の子がぐったりしております。



 そこへ、

 「んんっ?」

 堂々とドアを開けて入ってきたふたり組に気づいた、何人かのホストがいた。



 「えーと、まさか新人とか?」

 駆け寄り尋ねると、

 「まぁな、」
 見下ろすようにして黒髪のほうが答えたので、

 「おお!今までに見たことない、いい顔だからびっくりしたけど、それなら入って!」

 やっぱり気づかなかったわ。


 このあたりから、女の子たちの瞳には、正気が戻っていった。



 「……あれ?」


 立ちこめる薔薇の香りに隠されていた、毒素じみた空気は、澄んだ甘い匂いにかき消されてゆく。


 ぐったりしていた女の子たちも、おもむろに起き上がった。




 「え?どうなってるの?」
 ホストらは唖然としているが、


 「あたし、なにしてたんだろ?」


 女の子たちは、皆、瞳に輝きを取り戻した。



 そんでもって、

 「ぎゃあああっ……!」

 自分の置かれた現状に気づくまえに、


 「あのかた、知ってる―――――――っ!!」


 薔を指差して、黄色く叫んだのです。




 「ぁあ!よく見ると!!眼鏡と髪型で雰囲気違ってたから、今気づいたよ!」
 女の子たちはみんなすぐ気づいたので、ホストらもようやく気づいたようだ。

 「だれがンな、見ていいと言った?」
 「えええ!?」
 気づかれ焦るという予想を覆されたその場は、びっくり仰天。

 「だいたいキサマらはな、侵入者を無駄に警戒するぐれえなら、薔薇をこんなにも買い占めんじゃねぇよ。」
 「えええええ!?」
 かなりが、後ずさる。

 「薔薇を必要とするやつらにとっては、迷惑にもほどがある。軽挙妄動も甚だしいぞ?無えあたまだろうと、少しは使え。」
 「なんかもう、諭されてるよ!?」
 そして、ほとんどには、意味がわからない言葉があった。
 聞いてみたほうがいいよ?
 辞書の存在を、改めて知ることになるから。



 この間、醐留権は迅速に動き、はしゃいでいる女の子たちを隅のテーブルにまとめあげました。

 「なに勝手なことしてるの!?」
 「そのセリフ、そっくり返してやろう。」
 「えええ!?」

 怒り狂った何人かのホストらは、
 「こっちの血は、吸い尽くしてもいいよな。」
 醐留権を前に、鋭い牙をむき出した。

 「ほぅ、ヴァンパイアとはね、」
 特にひるむ様子もない醐留権は、眼鏡を光らせる。


 「ギャア――――――っ!」
 正気に戻った女の子たちは、牙を見て青ざめた。


 「自分の立場、わかってんのかぁ!?ちょっとは怯えろよ!」
 「は?」
 それでもまったく動じない醐留権なので、

 「頭きた!やっちまえーっ!」

 趣ある時代劇みたいな、掛け声と共に、何人かが醐留権に食ってかかろうとした。


 青ざめる女の子たちが、さらに青ざめることはなく、

 スゥ―――…

 構えた醐留権は、

 トン、トンッ、

 と、軽く首の後ろを叩いただけで、

 バタン―――――…

 食ってかかろうとした者をすべて、気絶させた。



 「近年のヴァンパイアは、不死身だと聞いた。それに軽い衝撃だ、身体に影響はない。」



 ぇぇぇぇぇぇぇええ!?



 「あんた何者だ!?」
 残りは、牙をいったん引っ込めた。

 「あのひともすごいね!」
 少女らは、はしゃいでいる。

 「大した事はない。ただ、いくつか段を持っているだけさ。」
 「大した事あるじゃん!」

 驚きのけぞったオトコたちのまえ、

 「それより早く、終わらせないか?」

 醐留権はジャケットを脱ぐ。


 「私の大切な彼女が、ここで私を待っているんでね。」





 ひやりとした空気のなかで、醐留権は脱いだジャケットを丁寧にたたんで、ソファの上へ置いたのでした。
 自分のじゃ、ないもんでね。

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