※第44話:Love(&Thorn).35





 「はあっ、はあ…っ、」
 薔は深い息を上げている。


 ゴクン―――――…

 ちゃんと嚥下したナナは、

 「……甘い………」

 くちびるにゆびさきを当て、頬を赤らめた。



 「…あぁ、ソレには、色んな味、あんだよ…」
 荒く息をしながら、瞳を閉じたまま薔は告げて、
 「そうなんですねぇ!」
 ナナは感心した。


 「でも、薔のはいつもなんか、甘いというか、すごいというか、」
 言いかけたナナは、

 …………はっ!

 とした。


 「うぎゃあ!すみません!ここかたいんで、痛かったですよね!?」
 急いで薔を抱き上げようとしたが、

 ぎゅうっ、

 寝たまんま、抱きしめられた。


 「…すげぇよかった、夜は、もっとシような?」
 「は、はい…」

 ナナのお楽しみは、尽きませんね。
 あ、片方は、お愉しみ、か?









 その後、いつも通り薔が料理に取りかかり、みんなでランチと相成りましたとさ。









 「では、行ってまいります!」
 いよいよナナは、こけしちゃんのもとへと向かいます。

 「あぁ。忘れモンはねーな?」
 「はい!」
 明るく返事をしたナナは、背を向けドアを開けようとした瞬間、

 「待て。」

 呼び止められて、振り向いた。



 ちゅっ

 ドアに片手を当て、覗き込むようにして、薔はやさしいキスを落とした。


 「気をつけて、行ってこいよ?」












 なんだか真っ赤な顔でマンションを出たナナは、しばらく歩いたところから、あとをつけられていった。
 彼女は大絶賛ドッキドキ中なので、このことには気づいていなかった。






 あとつけ人物は、頃合いを見ていたのだが、


 「こけしちゃ―ん!」
 「ナナちゃぁん。」


 学校の門ではしゃぐふたりを見て、ニヤリとした。


 「これは巧くいけば、さらに一人、手に入るな。」











 ―――――――…

 「こけしちゃんのお部屋、めちゃくちゃかわいいね!」
 「そぉぉおぉ?」
 はじめてナナが、足を踏み入れたこけしちゃんズルームは、かなりメルヘンチックだった。

 「それよりぃ、なんだかごめんねぇぇ。ナナちゃぁんは、薔くぅんとラブラブなのにぃ。」
 「大丈夫だよ!って、ぎゃあ!恥ずかしいよ、こけしちゃん!」
 ナナは真っ赤になり、こけしちゃんはコロコロと笑っている。


 「あのねぇぇ、ナナちゃぁん、このクッキーねぇ、あたしが焼いたのぉ。」
 「すごぉ!手作りとは思えない完璧さだけど、手作りのようなあたたかさも兼ね備えた素晴らしいクッキーだね!」
 大感動の、ナナ。


 「おいしすぎるよーっ!」
 「エヘヘぇ。」

 テンション上がりまくったナナとこけしちゃんは、恋バナでさらに盛り上がるのかな!?とも思われたのだが……、



 「ねぇぇ、ナナちゃぁん、」
 「なにかな!?こけしちゃん!」


 窓を指差して、こけしちゃんは告げました。



 「窓の外にねぇ、ヘンな二人組がいるのぉぉ。」


 と。








 「え……………?」
 振り向いたナナの目には、


 (またヘンなの、出たあ――――――――――っ!)


 窓に顔を押し付けている、アダルとモンズグの姿が映った。





 「ストーカーかなぁぁ?」
 こけしちゃんは、落ち着いている。

 「逃げよう!こけしちゃん!」
 「ぇえ?」
 ふたりが手を取り合って走り出すまえに、


 「いやぁ、おとぎ話のような部屋だ。」


 アダルとモンズグが、侵入してきてしまいました。




 「ぎゃあ!昨日のヘンなヤツらじゃん!」
 ナナは今、そのことに気づいたようだ。

 「ええ!?いまさら!?」
 「顔押し付けてたから、さらにヘンでわからなかったよ!」
 いつもによって、正直なナナですね。


 「ナナちゃぁん、お知り合いぃ?」
 「知り合いじゃないんだよ!?知りたくもないのに、知っちゃってるだけだよ!?」
 うまく説明するナナを、キョトンとこけしちゃんが見つめている。



 「バカにするのも、いい加減にしてほしい。」
 そのとき、アダルは、なにかを口にしかけた。

 「友達だなんて、笑わせる。お前が目の前にしている女はな、」



 ナナは、なにを言おうとしているのかを、さとった。


 「やめてよ――――――っ!」

 叫んだ直後、





 「ヴァンパイアなんだよ。」

 笑いながら、アダルは明かしたのでした。

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