※第44話:Love(&Thorn).35




 「もう、なんなんだよぉ!だからこの街は嫌だと、リリュークさまに言ったのに!」

 泣きながら走っていたアダルは、そう独りごちた。
 モンズグは、気絶中である。


 「拠点をここに置いたって、ここいらにはみんな、あんなすごい“免疫”働いてるんだから!」


 モンズグ重たいなと思いながらも、ぶつぶつ言いまくるアダルはリリュークのもとへと向かっていた。












 ガチャ――――――…

 こちら様は無事に、夜のお散歩を終えて帰宅しました。


 「なんだかんだで面白れぇモン見れたな、花子。」
 「ワン!」
 はしゃぐ花子から、リードを外した薔。

 (なんなのもう!とんでもなくかわいかったり、かっこよかったり、困るよおふたりさん!)
 ナナは、キュンのほうの死に寸前。

 「喉乾いたろ?」
 「ワン!」
 このやりとりを、輝く瞳で見つめているナナに、

 「おまえは、血が飲みてーのか?」
 落ち着き過ぎた薔が問いかけた。


 ……ぇぇえ!?


 「先ほどたくさんいただきましたので、大丈夫ですーっ!」
 「なら、風呂入るぞ?」


 ……え?


 「はやく来い。」
 「やっぱり一緒にですか―――――――――っ!?」


 リビングまでみんなして行きまして、花子は美味しそうに水分補給、ナナと薔は一緒にバスタイムですね。





 「またしても、どこ触ってるんですかあぁ―――――っ!!」
 「おい、あんま動くと、そのまま挿れるぞ?」

 つまりは、仲良く、洗いっこですね。










 ぐったり…

 お風呂から上がったナナは、しつこくなっちゃいそうであまり言いたくないんですけど、ベッドのうえでぐったりです。


 (さわられまくったのに、なんだかもどかしいよぉ!)

 とか思いながらも、ドキドキしております。


 「ナナ、」

 ドキッ!

 ふと名前を呼ばれ、ナナは瞳を開けました。





 …――近いよ!!





 (どうりで、めちゃくちゃいい匂いだと、想ったよ!)

 ベッドのうえで向き合って、極上の至近距離だった。


 「近いですってーっ!」
 ナナはやはり、真っ赤。


 そんななか、

 「キスするか?」

 瞳を細めて、薔は微笑んだ。


 (だめだよ、ほんっともう、かわいいよ!かわいすぎるよ!)
 しみじみのナナは、ときめきのあまり泣きそうです。



 「どーした?」
 瞳を細めたまんま、ぽーっとした感じで、問いかける、薔。

 (あああ!もうっ、わたしこのままだと、心臓が爆発するってーっ!)
 ナナは、限界か?



 すると、ちょっとだけもぞもぞと動いて、

 ちゅっ

 ナナのくちびるにやさしくキスを落とすと、


 「おやすみ、」


 薔は眠ってしまった。



 しかも、抱きついて。






 ナナに訪れた睡魔とは、気絶のことだったのか?



 とにもかくにも、眠る直前は、けっこうプラトニックだった。

 ような気がする。

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