※※第43話:Make Love(&Love!).7






 ナナと薔が帰宅をしたのは、15時近くだった。

 帰りはバスで来た。
 途中、日用品や食材なんかを、買ったりもしたんで。





 色々、仕舞い終えてから。

 リビングでは、花子が尻尾を振っている。

 「いやぁ、暑かったです」

 ね!と振り向いたナナのまえ、

 ファサッ

 薔はワイシャツを、脱ぎ捨てた。



 (ぎゃあ―――――――――――――っ!!)




 「なぜに脱ぐんですかぁ!?けっこういつも!しかも今ほんのりと、あああ汗!とんでもなく色っぽいんで、やめてください!」
 「おまえだって、汗かいてんだろ?」

 …そりゃそうですけど!

 「まぁ、いい。行くぞ?」
 「えっ?どこにですか?」

 それくらい、わかるでしょ?

 「一緒にシャワー、浴びるんだろ?」
 「そんなこと、わたし、ひとっことも言っておりません!」

 とにかくナナは、真っ赤っか。

 「おい、どさくさに紛れて、どこ触ってんだ?後にしろ。」
 「ぎゃあ――――――――っ!!」

 どこをさわったのかは、ご想像にお任せします。




 ちゃんとふたりして、シャワーを浴びたのでした。

 その一部始終も、ご想像にお任せさせてください!


 割愛!











 ぐったり…

 シャワーを終えたナナさんは、またまたぐったりです。

 (あああ…、もうっ、シャワーだけで、なぜにあんなにもエッチなんだぁ?)
 これは、割愛しないほうがよかったのか?


 ちなみにもう、みんなリビングにいます。




 花子は、ちゃんと着替え終わったご主人さまと、楽しく戯れております。



 (どちらも、とんでもなくかわいいよ――――――――っ!!)

 よーょー…(※エコー)


 窓の外に向かって、無言の絶叫を放ったナナ。


 「・・・・・・・・・・・・・、」
 薔は呆れ、花子はキョトンとしている。


 そのとき、ナナは、

 ……………はっ!!

 とした。



 なので大急ぎで、振り向いた。

 「あ、あの!」
 「なんだ?窓の外になんか見えるのか?」

 ………………え?

 「違いますよ!あの!」
 「だから、なんだ?」

 ナナは、けっこう楽しみだったことを思い出した。


 「こないだ借りてきたワンちゃんの映画が、すんごく観たいんですけど!」







 「あぁ、どーせなら、一緒に観るか?」
 「はい!」

 ということで、リビングでみんなして、ゴールデンレトリーバーの感動作を、鑑賞することと相成った。








 『モカ〜!』
 画面では、少女が号泣をしている。

 モカと呼ばれたのは、まさしくゴールデンレトリーバーの成犬で、雨の中、生き別れた元の家族に会いに来る途中、赤信号で渡ろうとしていた見ず知らずのご老人を助けて車に跳ねられてしまい、奇跡的に通りかかった元の家族の少女に、必死で声を掛けられているという流れになっていた。

 『モカぁ!死んじゃやだよぉ!』
 泣きじゃくる少女。


 「…グスッ、」
 あまりの悲劇に、ナナも泣いていた。

 なんてったってふたりで座っているソファのまえには、

 きゅぴーん

 とした瞳の花子がおります。


 それもあって、感情移入がよりできちゃうんです。



 モカは病院に運ばれ、一命をとりとめた。
 そしてまた、大好きな家で暮らすこととなった。

 実はモカが助けたご老人は、現役の作家で、小説になってからベストセラーになり、映画化までされたという実話のようだった。


 『言葉は通じなくとも、心は通じあえる。そして心が通じあえると、まるで言葉も通じたみたいで…、生きてゆこう、ずっと、一緒に。』
 ナレーションが語った、この言葉の後、エンドロールに入った。




 リモコンで停止ボタンは押され、画面は消えたが感動の余韻は相当なものである。


 「なんですかね、もうっ、ほんっといいお話でしたね…」
 グズつきまくって、涙を拭いながら、ナナは隣に座っていた薔へと、顔を向けました。

 すると、

 クイ――――…

 なんと、彼は、ゆびで涙を拭ったんです。



 (えええええええ!?)
 ナナは一瞬で、泣き止んだ。


 なんてったって薔は、長年花子と一緒に、暮らしてきたんでね。


 「まさかっ、まさか、やはり、」
 「見んな。」

 長い睫毛が、濡れております。


 (やだもう、かわいすぎるよ――――――っ!!)




 「花子、こっち来い。」

 呼ばれた花子はすぐさま駆け寄り、

 ぎゅうっ、

 つよく抱きしめる、薔。

 花子は大喜び。




 (どうしよう!?映画の感動に浸りたいのに、わたしはもう、おかしくなりそうだよ!この気持ちをどうにか押さえ込んで、一緒に浸りたいよ!?)

 ……あわわわわわ!!





 「すみません、わたしが、観たいと言ったばかりに、」
 「おまえは悪くねぇ。むしろ、一緒に観れて良かった、」

 慌てるナナですが、薔は花子につよく抱きついたまんまです。

 花子は尻尾をゆったりと振って、トロンとした目つきになっております。



 「ちょっともう、かわいすぎるんで、かわいいと言わせてください!かわいすぎます!」
 「ほんと花子は、かわいいよな。もっと言ってやれ。」


 あなたもですって―――――――――っ!!





 悶え死に寸前のナナは、勢いあまった。

 「すみません!もう、ガマンできません!」

 ばっ!

 あまり過ぎちゃったのか、花子に抱きついている薔へと抱きついてしまった。



 ぐらっ

 「おい、」

 「わわっ!?」


 そんなこんなんで、みんなしてバランスを崩した。




 ドサッ――――…

 ソファのうえに倒れたが、花子は床に戻った。

 (…………あれ?)

 気づくとナナは、ソファに薔を押し倒していた。



 「やけに大胆だな、おまえは俺をかわいがりてーのか?」

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