※※第43話:Make Love(&Love!).7






 醐留権宅は、なんとまあ、門からして立派だった。

 「…………………、」
 言葉を失う、こけしちゃん。


 ゆっくり開いた大きな門を、ベンツは通り抜けていった。


 広い庭の中へと、道路は続いている。






 その先に、またしても立派な豪邸が構えていた。






 玄関では、使用人らしき人がお出迎えまでしてくれた。



 「要、お母さんも悠香ちゃんと、お話をしたいのよ。一時間ほど、お母さんに預けなさい。」
 「日を改めてにしてください。」

 洋子は至極不服そうだったが、別になんてことなく、醐留権はこけしちゃんを自室に案内した。


 広すぎて、迷うほどの部屋数だった。





 パタン―――――――…

 ドアが閉められて、こけしちゃんは醐留権とふたりっきりになる。

 広い部屋の中には、あまり物が置かれていなかった。


 「大人の部屋って、感じですぅぅ。」
 にっこりする、こけしちゃん。

 「私は君ほど、大人ではないよ。」
 醐留権は後ろで、クスッと笑った。


 「えぇ?」
 どう考えても大人なので、目をぱちくりさせてこけしちゃんは振り向く。



 「今だって、自分を抑えるだけで精一杯だ。」



 醐留権は、言った。




 「ゾーラ先生ぇ?」
 こけしちゃんだって、心臓を抑えるのに精一杯なわけで。

 カチャ…

 眼鏡を外した醐留権は、

 「桜葉、」

 ついに、告げました。




 「君が、好きだ。」










 ――――――――…

 ぼろっ、

 こけしちゃんの瞳からは、涙がこぼれ落ちる。

 「先にぃ、言われちゃったぁぁ…」
 泣きながらこけしちゃんは、ニコニコしている。


 「あたしもぉ、ゾーラ先生がぁぁ、大好きぃ、なのぉぉ。」





 「“大”を付けるとは、桜葉、反則だ。私も大好きなんだ。」
 「エヘヘぇ。」
 ニコニコを続けようとしたこけしちゃんだったが、


 ギュッ


 抱きしめられた。




 ファサ―――――…

 はずみで、ストールが床に舞い落ちる。


 ドキドキドキドキ…
 こけしちゃんの心臓は、今まさに、口から飛び出てしまいそうだが、飛び出てもキャッチしてもらえることは確かだ。


 「…桜葉、キスは、したことあるか?」

 抱きしめながら、尋ねる醐留権。

 「あるわけぇ、ないのぉぉ。ゾーラ先生ぇがぁぁ、初恋ぃ、だからぁぁ…、」
 振り絞ったこけしちゃんのくちびるに、

 ちゅっ、

 初めてのキスは、落とされた。




 こけしちゃん、真っ赤現象。

 「君の初恋に応えるため、すべて私が教えよう。教師ではなく、男として。」
 そして醐留権は、笑った。



 「ゾーラ先生ぇ…、」

 この後、もう少しくらいは教えてもらえるのかな!?とも、思われたのだが……、


 「要!お茶の用意ができたから、悠香ちゃん連れてらっしゃい!独り占めは許しませんよ!」


 母・洋子が、早くも授業終了のチャイムを大声で鳴らしてしまったようだ。


 「はぁ…」
 呆れた醐留権は、天井を仰ぎ見てため息をつく。

 「エヘヘぇ。」
 こけしちゃんは、笑っている。



 こちら様も、ゆっくりと!

 かな?

[ 480/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る