※※第43話:Make Love(&Love!).7
(さて!わたしも帰ろうかな!)
感動の余韻に浸り、立ち上がったナナだったが、
「ちょっとあんた、待ちなさいよ!」
なんと、和枝に大声を掛けられたのである。
(えええええ!?)
青ざめたナナは走り去ろとしたが、腕を掴まれて無理だった。
「どういうことよ!?」
和枝は、凄む。
「いや、どういうことってね、あなた、自分のことでしょ!わたし帰るから、電話しないといけないから離して!」
「離すものですか!」
必死になるナナと、凄い形相の和枝。
(ぇぇえ!?あの女の子、とばっちり受けてるんじゃないの!?だれか助けてあげてよ!)
ラウンジの空気は、張り詰めた。
まさにそのとき、
「おい、」
堂々とした声が、空気を貫いた。
「叫び声するから来てやったが、なに揉めてんだ?おまえは、」
(ぎゃあ――――――――――――っ!!)
もはやナナは、リトマス紙どころの話ではない。
(なんかすんごい立派なひとが、いらっしゃったよ――――――――――っ!!)
ラウンジも、さらに張り詰めたんだかがわからない。
「終わったら電話しろ、つったろ?待たせんじゃねーよ。」
「ほんとすみません!この状況さえなければ、すぐにお電話したかったんです!」
このやりとりを見ている和枝は、ナナの腕を掴んだままポカンとした。
よって、
「だれが掴んでいいと言った?」
有無を言わせぬ視線を、すぐさま送られた。
…ひぇえ!
「すみませんでした!」
慌てた和枝は、手を離す。
「赤くなってんじゃねーか、大丈夫か?」
「いや、あの、大丈夫です…、って、近い!おカオ!いやいや、それよりおそらく、顔のほうが赤いです…」
それは確かであるな。
「あ!もう引きました!」
ナナさん、ヴァンパイアだからね。
「なら、帰るぞ。もうここに用はなんもねーからな。」
「はい!」
こちら様も、手を繋いで歩きだしちゃいましたね。
「帰りに寄りてー場所は、あるか?」
「いや、もう、薔と一緒ならどこでも行きたいですけど、特にないです!」
そして、世界に入っちゃいましたね。
「なんか、あのおふたり、見たことあるかも…、」
和枝を含め、けっこうな人物がそう呟いた。
自ずと拍手は、送られた。
「要さん、すごいと思っていたけど、うえにはうえがいた!」
「あなたは本当に、恥を知りなさい!」
充はこの間、伸び続けていた。
ほどなくして駆けつけた警備員に、連行されたがね、和枝とその母と。
――――――…
漆黒のベンツは、ゆったりと国道を走っている。
「ゾーラ先生ぇ、ごめんなさいぃぃ…」
助手席でこけしちゃんは、しょけ返っている。
「なにを謝っているんだ?桜葉、君はなに一つも、悪いことをしていないじゃないか。」
「だってぇぇ…、」
この会話を後部座席で聞いている要母は、ふるふると震えている。
よくよく気づくと、醐留権の母は、かなりの美人だった。
「それより、私の家でゆっくりしていきなさい。」
「でもぉぉ…、」
ここらへんで、要母は我慢がいかなくなった。
「ちょっといいかしら!?」
なので、身を乗り出して叫んだ。
「あなた、お名前は!?」
「えぇとぉ、桜葉 悠香ですぅぅ。」
いささか怯えるこけしちゃんだったが、要母の瞳はキラキラしていた。
「悠香ちゃんね!?わたしは要の母、洋子よ!私はね、強くて可愛い女の子が、大好きなの!あなた、その可憐な容姿で実は柔道できるとか、反則よ!?悶え死にさせる気!?とにかくツボなのよ!」
だから要母こと・洋子は、震えていたのか。
「すみませんぅ。死なないでくださぃぃ。お願いですぅ。」
「可愛いわよ!」
洋子、大興奮。
「お母さん、落ち着いてください。桜葉が困ってます。」
「要!お母さんは今ね、悠香ちゃんと喋っているのよ!?」
こけしちゃんはキョトンとしつつも、なんだか泣きそうだった。
嬉しくって、ね。
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