第42話:Love(+Friendship!).34






 「ちょっと!どうしよう!?遅くなっちゃったよ!」

 料理に励んでいたナナは、最終的に炎をあげた。

 大惨事かと思いきや、消火活動が迅速に家族間で行われたため、壁が焦げた程度で済んだ。


 その後、いろいろと諭されたりして、てんやわんやと相成り、帰路に着いた頃(現在の帰路として捉えよう!)は、なんと、22時近かった。









 花子も一緒だったし、無事に帰宅できた。

 そもそもナナさんヴァンパイアであるけど、それ言っちゃったら身も蓋もないよね。





 ガチャ―――…

 玄関を開けると、


 シ――――――ン…


 中は真っ暗で、静まり返っていた。



 「……薔……?」

 ナナはそろそろと、花子と共にリビングへ向かった。











 リビングには、だれもいなかった。
 その上、クーラーは効いておらず、窓のカーテンが揺れていたのだ。




 ナナは、青ざめた。




 (まさか――――…誘拐!?)






 ドサッ

 制服やなんやらの入った、下げていた紙袋を落とすナナ。


 「どどどどどうしよう!?」

 とにかく彼女は、慌てまくった。

 「あのひとがあまりにもかわいいから、さらわれたに違いないよーっ!」
 そしてふるえる手で、携帯を取り出した。

 「け、警察に電話しなきゃ!警察の電話番号って、何番!?電話帳は!?」
 彼女はウロウロしまくり、

 「しっかりしろ!わたし!きっとこの窓から、さらわれたんだよ!」
 窓まで死に物狂いで走ると、

 「花子ちゃーん!!」

 すぐさま花子に駆け寄り、泣きついた。


 「あなたの優れたお鼻で、ご主人さまのいい匂いを、たどっていってーっ!!」




 花子はわんともきゃんとも言わない。

 「花子ちゃん!ご主人さまが一大事なのに、落ち着いてらっしゃる!さすが!見習いたい!」

 よし!行こう!

 と意気込んだナナの後ろ、




 「だれが一大事なんだ?」



 一大事なはずのひとの、落ち着き払った声がした。





 ………おおおわぁぁあ!?





 「よくご無事でーっ!」
 「あ?」

 ナナは無我夢中で、声のしたほうへと手を伸ばした。


 パチ


 その瞬間、薔が明かりを点けた。




 感動的な再会、と思いきや、


 (…………あれ?)


 ナナの伸ばした手は、ちょうどTシャツのうえから薔の胸に当たっていた。




 「どこ触ってんだ?」






 (ぎゃあ―――――――――――――っ!!)





 口を開けて真っ赤っかになったナナは、思わず手を引っ込めてから、腰を抜かした。


 「おまえは心で叫んだろーが、この場合叫ぶのは、俺だぞ?」

 薔は堂々と見下ろしている。




 「すみませんでしたぁ!今のはほんとうに、偶然さわっちゃったんです!」
 「もっとさわるか?」

 ……えっ!?
 いいんですか!?

 …―――じゃなくて!!

 「それより、もんのすごく心配したんですけど、どこに行ってらしたんですかぁ!?」
 「風呂だ。」

 ……そこまで調べてなかったぁあ!

 「おまえは心配性だな。つぎからはちゃんと、全部覗けよ?」
 「覗く!?」

 このやりとりを見ている花子の目は、心なしか、トロンとしているみたいですな。


 そんでもって、よくよく考えてみよう。
 省エネは、大事!




 「ほんっとに、心配したんですってぇ……!」
 安心しきったナナは、ボロボロと泣きだした。


 「心配すんなよ。だいたいおまえは、見当違いも甚だしいぞ?」

 座り込んでいたナナの目の前、同じく座って抱きしめた薔は、耳もとで囁きかけた。



 「だれが、かわいいからさらわれたって?」

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