第42話:Love(+Friendship!).34





 30分ほどで醐留権は到着し、はにかむこけしちゃんを連れて帰っていった。




 そしてナナは、

 「お母さん、」

 この機会に、母へと依頼した。


 「お料理を、教えてください!」



 「あら、いいわよ。任せなさい。」

 母と娘はキッチンへ入り、父は娘の家族兼ボディガードと戯れていた。
 和気藹々を、丸描きだった。
 ……たぶん。


 「あと、ナナ、制服クリーニングから帰ってきたわよ?薔くんのシャツも、お母さんがアイロン掛けといたから。」
 「ええ!?お母さん、ありがたすぎて、ありがとう!!」

 結果的に、よかったね。











 ―――――――…

 「あのねぇぇ、ゾーラ先生ぇ、」
 ベンツの車内、こけしちゃんは申し訳なさそうに告げた。

 「黙って帰ってぇ、ごめんなさいぃ。」


 と。




 「気にすることはない。」
 運転中であるため、ちらりとやさしくこけしちゃんを見た醐留権は、

 「しかし、もう会えないのではないかと思って、すごく不安になったよ。」

 前を見たまま、どこかしら儚く言葉にした。


 「えぇ…?」
 こけしちゃんの両手には、ちからがこもる。

 「学校では会えるのに、おかしな話だな。」
 醐留権は笑って言った。


 ぎゅっ、

 こけしちゃんは拳を固める。


 いよいよ、告白か!?



 と想われた瞬間、



 「桜葉、聞いてくれ。」



 醐留権は明かした。



 「私は明日、見合いをするんだ。」











 固められたこけしちゃんの両手は、静かに開かれた。

 涙の代わりに、ぽつりと、口からこぼれ出た言葉、

 それは、


 「うまくいくとぉ、いいですねぇぇ。」






 ――――――――…

 「それが君の、ほんとうかい?」
 前を見ている醐留権は、ふっとこけしちゃんへとこころを投げかけて、


 「私のほんとうはね、うまくいかないようにと、願って止まないよ。」


 力強く告げた。




 「定められたレールを走るには、私は意志を持ち過ぎた。」
 笑っている醐留権。

 彼のほんとうとこけしちゃんのほんとうは、本当のとこ、おんなじだった。



 「私は家じゃない。私は、私だ。」




 こけしちゃんは、告白することもなく、惹かれるまま帰宅をして、ひとつの決心をしたのでした。

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