※※第41話:Make Love!(&Cosplay).6





 ゴクゴクと水分補給をしたナナは、ご丁寧なことに、グラスへ水を汲んで薔にも持って帰りました。


 パタン――――…

 部屋へ戻ると、

 「・・・・・・・・・・・・、」

 今度は、なんと薔は、学園祭の時の優勝賞品である、コスメセットを眺めていた。


 …あわぁああ!?

 「どうなさいましたぁ!?」
 「おまえは、まったく使ってねーよな、これ。」

 堂々と胡座をかいている薔へと、駆け寄ったナナはしゃがみ込む。


 「いや、それより、お水をどうぞ!」
 「あぁ、悪りぃな。とりあえずそこ置いとけ。」

 持ち帰ったお水は、いったん目の前にあったテーブルに置かれた。


 「ナナ、」
 そして、薔は言ったんです。


 「これ、使ってみるか?」





 「え?わたし、使い方がわかりません。」
 ナナは目をぱちくりさせる。


 「俺が教えてやる。」
 「えーっ!?もしや、いつもお化粧なさってるんですかぁ!?」
 またまたびっくり仰天のナナですが、

 「するわけねーだろ。見てたから、分かるんだよ。」
 こう言い放った彼は、ちゃんとモデル経験ありますんでね。


 「そりゃそうですよね!お化粧の必要とか、まったくないと思います!キレイすぎるんで!」
 「いーから、ここへ座れ。」

 と言われたのは、

 「えーっ!?薔のうえに座るんですかぁ!?」

 でした。


 「おい、違ぇだろ?」

 ……………はっ!!

 「すみません…、えと、ご主人さま、でした……」

 ということで、真っ赤になったナナは、薔にまたがるようにして座ったんです。





 「肩に手を置け。」
 この言葉に、素直に従ったナナ。


 スッ、

 薔の細長いゆびさきが、彼女の頬に触れる。

 ナナは、ビクッとなる。


 「おまえは普段から、いい色してんな、ここ。」
 と言われたのは、もちろん頬のことで、

 つぎにゆびさきはくちびるに触れて、

 「真っ赤じゃねーのも、いいかもな、」

 薔はコスメセットの中から、ほんのりピンク色のグロスルージュを取り出した。





 微かにふるえるナナのくちびるに、ゆっくり彩りが引かれてゆく。

 かなり、発色と艶が良かった。


 「っとに、これで落ちねーのか?」
 くちびるをまじまじと見つめられて、

 「ちょちょ、ちょっと待ってください!わたしもう少しお水飲みます!」
 慌てまくったナナは、テーブルのうえにあったグラスを手に取った。


 「それは、俺のじゃねーのか?」
 「ま、また、持ってまいります!もっと新鮮なのを!」

 このとき、うっかりナナは、


 バシャッ


 手を滑らせた。





 ポタポタ…

 薔の髪から、水が滴り落ちる。



 (ぎゃあ―――――――――――――っ!!)



 ほぼ空になったグラスをテーブルに置いたナナは、やたらあたふたした。



 「すみません!なんという、色っぽいことにーっ!?」
 「濡らしたおまえが、それ、言うか?」

 濡れた髪をかきあげて、薔は呆れたような声を出す。


 …ひゃああ!



 「すぐに拭きます!」
 下りようとしたナナは、

 ギュ

 腕を掴まれた。



 ちょっとだけ、濡れてゆく。



 唖然とするナナに向かって、薔は言ったのです。


 「拭くまえに、脱がせよ。」






 「えええええ!?わたしがですかーっ!?」
 「おまえの得意分野だろ?」

 ……なんですかそれは!?

 「いや、だってもう、ダイレクトだかに見えちゃいますし、」
 「このままでも、見えるぞ?」

 …えっ?

 ナナの目の前、薔はシャツを引っ張った。


 「ほら、」



 (うぎゃあ―――――――っ!!)


 「なぜに昨日は黒でしたのに、肝心なときにはけっこう、白なんですかぁ!?」
 「良かったな。」

 特に明記しなかったけど、昨日は黒だったんです。



 「はやくやれよ。また熱出すぞ?」
 「どれだけ熱を、出すんですかぁ!?」

 なんだかんだ言いながらもナナは、シャツのボタンに手を掛けたんだとさ。






 パサ――…

 濡れたシャツが、床に落ちて。

 「お洗濯、するんで…、タオルも持ってきます、」
 「あぁ。」

 ナナは急いで、バスルームへと向かったのでした。







 うろ覚えのやり方で、シャツを洗濯機にかける。

 (どちらにせよ、制服もクリーニングから戻ってないし、家には近いうちに来なきゃだよね。)

 とか思いながら、新しいバスタオルを抱えて、ナナは部屋に戻ったのでした。

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