第4話:Game(+Sadness).2




 ……あのひとのかなしみに太刀打ちするためには、わたしは能力(ちから)なんか、纏っていちゃいけないんだ。


 ここまできて、芽生えた勇気。
 摘み取られるまえに、実る?


 あなたがこれを、ゲームだと言うのなら。

 楽しんでやろうじゃないの。
 ……………できる限り、ね。












 指輪をつけて、学校へ行った日。
「うわぁ……!」
 なんか、世界がいつもと違うかも!
 感動する、ナナ。
 (なんだよ〜!みんな、普通じゃんかよ〜!だれかわたしに声かけないのかよ〜!)

「ムダにブツブツうるせーぞ。」



 ………………!!



「ぎゃあ――――――っ!!」


「暮中さん!いいいいつからそこにいらしたんですか!?」
「47秒前からだ。」

 ……………時計?
 このひとって、時計?

 ナナが時計ではないかと疑う、エクソシストにも勝る者・暮中 薔は、瞳を閉じて、隣に座っていた。





 …………ま、ま、ま…、


 まつげ長っ!!


 なにこれ?
 改めて見てみると、このひとまつげ長いよ!




 (キレイ――――――――…)




 うっとり。




「おい、」



 …………は!!見られてる!!




「なに見てんだ?逆に見られてーのか?」
 ………………はい?
「見られてーなら脱がしてやるぞ。ありがたく思え。」




 お願いですから、黙っててください!!
 ……あ、でもやっぱり、黙ってなくていいです!!










 やってきました、放課後。
 本日は、逃亡する必要がないんです!
 なんとまあ、幸せなことでしょうか!

 ………と、思ったら、

 ザァ―――――――…

 どしゃ降りだよ。


 (え?天気予報では、本日の降水確率、10%だったよね?10%ってなに?10%中の10%のこと?)

 もはや言ってること、自分でもよくわからないわ。

「どーしたらいいのよ〜?傘なんて、持ってないよ〜!」
「傘なら、ここにあるぞ。」


 ……………どぇえ!?


 振り向くと、薔が立っていた。
 え?まさか、貸してくれるの……………?

「……貸して、くれるんですか?」
 ナナは恐る恐る、尋ねる。
「これが2本に見えるのか?」
「…どう見ても、1本です。」

「ならいっそ聞くな。」
「……は、はい…………。」

 ナナはしょんぼりと、ずぶ濡れ覚悟で歩き出した。
 正面玄関で、雨の強さを目の当たりにしていたとき、

 バサ―――――…

 ……え…………?

 後ろから、広げた傘を差し出された。

「なにしてんだ?行くぞ。」

 と言うのは、もちろんあのひとのことで、

「どこに、ですか…?」
「俺の家に決まってんだろーが。」


 はい?


「なんで、ですかね?」
「傘いらねーのか?お前は、」

 ……………はいぃ!?

「つ、つまりはあれですよね?アナタさまのお屋敷に行けば傘がおふたつ以上あるので、そこまでひとつの傘で行き、お屋敷でこのわたくしめにおひとつ貸してくださるということですよね?」
「その通りだ。よくわかったな、お前にしては。」



 ……オイ、わたし。
 嬉しく思っちゃ、ダメだよ。
 ダメだ――――っ!!

 ペチペチペチ!

 言い聞かせるように、ナナが頬を叩いていると、

「お前、まず隔離されたほうがいいみてーだな。」

 ……………ひどい。

 薔は少し、呆れ気味といいますかで。


 それでも、

「行くぞ、」
「え?…ちょっ………」

 歩き出した、ふたり。




 これは俗に言う、“相合い傘”です。

[ 40/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る