第40話:Love(&Lives).33





 真っ白なディスクに、真っ白な歌詞カード。

 黒くて綺麗な文字。



 ソファで寄り添って、再生する。




 『…このCDは、どっちが聴いているのかな?』




 とてもやんわりとした、透き通るような声が響いた。





 ゴク…

 ナナは、息をのむ。

 彼女の肩に置いた手を、すこし薔はつよめる。


 『これね、一枚にしようか、百枚にしようか、千枚にしようか、で、わたし迷ったの。』

 やさしい声は、続けます。


 『でね、わたし欲張りだから、結局は二枚にしちゃった。』

 そして、美咲は、クスッと笑った。




 『二枚なら、別々のものを、と思うでしょ?でも同じにしたの。手抜きじゃないのよ?これはね、出せなくても構わない、手紙なの。だから同じにしとかないと、あからさまになっちゃうでしょ?』

 奥深くへと染み入る、やんわり声は告げた。


 『いつまでも、“ここ”にいる存在として、わたしは生きつづけます。』










 Twilight〜夕暮に花束を〜

       作詞・曲:美咲


 すこし肌寒い季節に
 あなたと出逢ったね
 かじかむ指は
 ぬくもりでふるえたの

 困らせたくないと
 こころで想っても
 あなたの困った顔
 好きだよ

 なくせないものは全部
 なくさないままゆくから
 わたしはどこでも
 ちゃんとそばにいるよ


 でね
 ずっと
 あなたもちゃんとここにいて
 憎らしいくらい 信じられる
 ありがとう
 大好きよ



 愚かなひともいて
 醜いひともいるね
 でもだれかにとっては
 とても大切なひと

 無意味なことにでも
 意味はきっとあって
 そこに気づけば
 意味は続くでしょ?

 命は巡るというけど
 わたしは風になりたい
 廻る世界でも
 あなたを包みたい


 だから
 お願い
 思い出して悲しむのなら
 どうかきれいに忘れてね
 大丈夫
 わたしはいつも
 やさしく思い出すから



 夕日のあとには
 月が輝き
 美しく
 咲いていたのは
 生まれたばかりの
 薔薇の花



 そして
 ずっと
 あなたはちゃんとここにいて
 笑えるくらい 分かち合える
 ありがとう
 大好きよ


 思い出して悲しむのなら
 どうかきれいに忘れてね
 大丈夫
 わたしはいつも
 やさしく思い出すから


 やさしく思い出すのなら
 いつまでも
 忘れないで

[ 450/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る