第40話:Love(&Lives).33





 「え―――――…?」

 泣きはらした顔を上げた、ナナ。

 「俺は今ここにいて、生きてんだが、それを考えてかなしくなって、泣いて、おまえはどうすんだ?」
 見つめる薔は、やさしく続けます。


 「えと、」
 ナナは言葉に詰まる。

 「そんなん、考えるには、早すぎんだよ。俺はまだ、15だぞ?」
 ちょっとだけ笑った、薔。




 「確かに、そうですね、」
 ナナのこころは、穏やかになってきており。

 「それに、愛があれば、いつまでも生きつづけるんだよ。」
 止まりつつある涙を、ゆびと言葉で拭って、

 「だから、んなモン考えらんねーほど、おまえ、俺を愛せよ?」

 染み入るような笑顔で、薔は言ったのでした。




 「わぁあ、なんかもう、ほんと、ありがとうございます!」
 ナナも笑っている。

 「おまえのそういうとこ、ハマるな、」
 んでもって、先ほどよりつよく、彼女を薔が抱きしめたので、


 ……あわぁあ!


 ナナは、想った。



 (さっき、どさくさに紛れて、抱きついちゃったよ!)



 いい匂いだのなんだので、真っ赤になるナナさんです。

 よくよく思い起こしてみると、通常で(なにと比べて通常?)まえから抱きつくのは、極めて珍しいかと。




 「俺もずっと、愛しつづけるからな、ナナ。」

 そして抱きしめながら、とても深い瞳で、薔は告げたのでした。




 ソファに座って抱き合うふたりを、お座りした花子がつぶらな瞳で見つめております。

 尻尾をゆらゆらと振っている彼女は、そのまま伏せをしてトロンと目を閉じました。




 やがて抱き合っていたふたりは、

 スッ…

 ちゃんと見つめ合ってから、


 チュ―――…


 やわらかく、くちびるを重ねたのです。




 「ん…………」

 何度か、やさしいリップ音が立って、互いの心音を感じ合う。



 左には、わたしの心臓、右には、あなたの心臓。





 しばらくキスを続けてから、すこしだけ離して、

 「ナナ、」

 触れ合いそうな距離で、頬を挟み込む薔は問いかけました。


 「おまえ、歌は好きか?」






 「はい………?」
 ナナはキョトンとする。
 「一緒に聴きてぇ歌が、あんだよ。」
 距離はそのまんまで、薔は続ける。

 「えーと、お母さんが演歌大好きなんで、それも含めて歌は大好きです。」
 「おまえのおふくろも、面白れぇんだな。」
 ナナは改めて、とてつもない至近距離にドキドキする。


 「なら、これから聴くか?」
 「は、はい、」

 頷いたナナのまえ、立ち上がった薔は明かした。



 「美咲さんの、歌だ。」

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