※※第39話:Make Love(&Gasp).5





 ちゃんと後片付けやらなんやらを、終えて。


 リビングに、いました。


 「あの、もう一本は、なにを借りたんですか?」
 SUTAYA(もうごめん)にて、ヴァンパイアコーナーで追加された一本が、何気に気になっていたナナです。

 そしてこの質問に、

 「あぁ、ラブホでヤったとき、言ったやつだ。」

 と、薔は答えました。



 ………らぶほ?



 ……あああああ!



 ナナは、ちゃんと思い出せた。




 「そう言えば、あのときは縛ったり色々してしまい、すみませんでした!」
 「今更気にすんな。あんなん、序の口にもほどがあるからな。」

 「えええええ!?」


 懸命に謝ったナナだが、薔はやっぱり落ち着いて応えましたね。




 そんでもって、

 「一緒に観るか?」

 彼はこう提案むしろ誘惑をしたので、

 「わぁ!観ます!」

 ふたりと花子は、リビングにてDVD鑑賞をすることになりました。

 やたら、予想通りだったよ。









 しょっぱなから、かなりダークな世界観の映画だった。

 棺桶が登場したが、ナナは棺桶に入ったことなど一度もない。

 ふたりはソファに並んで座っており、花子はどちらかと言うとご主人さま側に寄り添ってます。


 んで、

 「なんか、あのヴァンパイア役のかた、キレイな顔をしていま」

 すね、と続ける予定で、ナナは薔を見たのだが、

 「……………、」

 またしても、不機嫌そうに彼はナナを見ていた。



 …おわぁあ!

 「すけど、薔のほうがキレイですよ!これほんとうです!」

 ナナさん、バカップルには気をつけてほしいけど、なんともはやだよ。



 こころから、告げたナナでしたけど、薔は黙ってまえを向いてしまった。

 (ぎゃあ!どうしよう!?)
 ナナはあたふたひとしきりですがね、映画観ないといけないからね。



 クラシカルな雰囲気のなかに、ロックな音楽が流れております。

 (なんか、ちょっと懐かしいかも、)
 ふっと思ったナナの、

 キュ―――…

 手に、薔の手が重なった。


 ドキン!

 鼓動が、急加速してゆく。


 トン――――…

 そのまま、薔は、ナナの肩にあたまをもたせました。


 ゴク…

 赤面したナナは、息をのむ。

 ドキドキドキドキ

 心臓の存在感が、おそろしいくらいに胸を打つ。


 「あ、あの…、」
 これでは映画どころじゃないんですけど、と言いたくて、おもむろに薔を見ると、

 フッ――…

 ナナを見上げるようにして、彼はやさしく微笑みかけた。


 そしてまた、静かにまえを向いた。




 ゆっくりと、ナナもまえを向く。

 映画に集中しようとしたが、ドキドキを抑え込もうとしたが、かなりの勢いで困難だった。

 しかし、こころ安らぐ、いい匂いがしている。




 硬直するナナの肩にもたれ、薔はしばらくそっと、重ねた手を撫でていた。

 ここら辺は、映画の記憶がかなり、うろ覚えである。



 ただ、やわらかく手を置かれた頃から、ナナは徐々に内容を理解していった。




 …――儚いからこそ美しい君を、この手で――――――…





 ヴァンパイアのナナにとって、奥深き内容だった。

 途中でちゃんと、ふたりして再現したシーンは、流れました。
 かなりエロティックだったが、ふたりともなにも言わずにいた。

 ちなみに花子は、そのシーンのまえに、トロンとした目つきでお部屋に向かっていきました。






 作品が、終わってみて。

 「なんだか、深くて綺麗な映画でしたね。」
 感動と感心のナナは、薔へと声を掛けたのだが、

 「……………」

 返事がないのでよくよく見ると、




 彼はナナの肩にもたれて、静かに眠っていた。






 「―――――――…」

 かわいさとか愛おしさとか、卓越したかのような、なんとも言えない愛情がこみ上げて、


 無性に、泣きたくなった。



 ほんとは、かき抱くほどに抱きしめて、激しくキスをしてしまいたかった。





 眠っているし、できっこないので、ナナは彼に、毛布とか掛けてあげよう、と想ったのです。

 なので、起こさないよう、そうっとやさしく、ソファに横たえて、

 足音を立てず、慎重に寝室へ向かおうとしたのです。




 ギュ―――――…

 ところが、すぐに、Tシャツの裾を掴まれた。




 はっとして、振り向くと、




 「どこへ、行くんだ?」




 こころなしか、でもこころは深くまでで、薔はどこかしら切なげに、ソファに寝たままうるんだ瞳で、ナナを見上げていた。

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