※※第39話:Make Love(&Gasp).5





 ガチャ――――…

 よし!
 着いたぞマンション!


 花子のお出迎えとともに、リビングへと到着です。


 「飯作ってやるから、おまえは家に連絡しとけ。」
 着いたとたん、薔はこう命じました。

 「あ!そうでした!心配してます、きっと!」
 慌てて電話を手にしたナナへ向かって、もうひとつ。

 「今夜も泊まってくって、ちゃんと言っとけよ?」





 ……かぁぁあ!

 ナナは真っ赤になった。

 まぁ、よくよく考えてみるとだね、何日かお泊まりしてたよね。


 唖然としながら赤面中のナナに微笑みかけると、薔はキッチンへと入っていきました。








 花子は、ナナの傍らで優雅に寄り添います。


 プルルル―…

 『はい、』

 母は、すぐ電話に出た。


 「お母さん!」
 懐かしさが込み上げて、ちょっと泣きそうになる。

 『ナナだったのね、お疲れさま。』
 電話越し、母はやさしく微笑んでいた。


 「ごめんね、お母さん、心配かけて、」
 『まぁ、心配はしたけど、結果好しで、喜びが上回ったわよ。ありがとね。』

 母の声は、とても力強い。


 んで、

 『お母さん、ちゃんと録画しといたから安心してね。バッチリ、濃厚なキスシーンも。』
 「ぎゃあ!ぜんぜん濃厚ではなかったよ!?」

 母は悪戯っぽく言ったが、ナナは真面目に答えた。

 濃厚なのは、普段してるからねぇ。


 『まぁ、今夜も泊まるなら、もっとすごいのしてもらいなさい。』
 「お母さん、すごい!泊まるって、まだ伝えてなかったのに!」

 ナナは、母の予知能力には感心したが、もっとすごいのは当たり前のように流した。

 『それくらい、わかるわよ。いまね、号泣してるお父さんが、電話代わりたいらしいから代わるわね。』
 「ぇえ!?号泣してるの!?」

 びっくりしたナナだったが、

 『ナナぁ…、』

 グズっている父は、すぐ電話を代わった。


 「お父さん、大丈夫!?」
 『お父さん、感動しちゃったぁ……、』

 ……………はい?

 父は続けます。

 『なにぃ、もう、めちゃくちゃいい子じゃん、お前の彼氏ぃ。キスなん、しちゃってもう…、』
 「うん!果てしなくいいひとだよ!わたしの両親は、やたらとそこに触れたがるよ、もうっ!」

 仲良し家族で、いいことだ。


 『今日は、お泊まり許すから、もっとすごいのしてもらうんだぞぉ?』
 「お父さん、なんだかんだ言っていつも許してるから、わたしこんなにもお泊まりできてるよ?ありがとう!」

 えー、こりゃナナさん、もっとすごいのしてもらうしかないわ。

 あ、さっきしたか。



 『じゃあ、もう、お父さんは、お母さんと3月のコアラ食べるから、気にせず、お泊まりしてきなさい。』
 「うん!お父さん、ありがとう!」

 ナナ父よ、その菓子名で合ってるのか?



 その後、父は母に電話を託したようだ。

 『じゃあね、ナナ、健闘を祈るわ。』
 「ありがとう、お母さん!おやすみ!」

 こころがあったかく繋がって、電話は切れた。




 穏やかな表情で、携帯を閉じたナナへと、

 「ワン!」

 待ってましたとばかりに、花子が飛びつく。

 「花子ちゃーん!かわいすぎるよーっ!」
 ナナはテンションが上がっていた。
 上がっていたところへ持ってきての、花子の飛びつきだった。

 「よしよし!」
 ナナは花子を抱いて、あたまをなでなでしているんですが、この光景は、ちゃんと丸見えである。



 ナナと花子はしばし戯れあっていたが、

 ちょん、

 ふと、花子が、テーブルの上に置いてあるテレビのリモコンに、前脚を置いたのだ。


 「花子ちゃん、テレビ観たいの?」
 この質問に、花子は尻尾をブンと振って答えた。

 「じゃあ、一緒に観ようか。」
 にこっと笑って、ナナがテレビをつけると、


 『ザザえもんでございま〜す♪』


 運が良いのか悪いのか、ザザえもんが始まったところだった。



 (ザザえも――――ん!!)

 日中、ベンツのなかにこぼしまくったナナだが、美味しく頂いたザザえもんだったので懐かしさが押し寄せた。

 花子は、食い入るようにザザえもんを見つめている。

 ふたりはリビングで、国民的アニメ、《ザザえもん》を観ることになった。






 ザザえもんは、過去からやってきたちょっとオトボケな過去型ロボットで、タイムマシンが落ちたとき自宅の屋根に穴を開けてしまった、未来少年・ピノ太くんに弱みを握られているという、国民的アニメとしてはどうなのか?と思われる国民的アニメであった。


 『ザザえもん、またシャイアンを泣かせたのかい?』
 『ごめんよぉ、シャイアンがあまりにもシャイボーイで全然喋らないから、歌声を聴いてみたかったんだよぉ。』

 テレビのなかで、ピノ太くんは腕を組んでおり、ザザえもんはうなだれている。

 『ダメじゃないか、シャイアン、あまりの恥ずかしさに泣いてたよ?』
 『だから泣いてたの!?でもシャイアン、歌めっちゃ上手かったよ!?』

 うーん、こういうのひねるの、大変。

 『当たり前だよ。シャイアン、カラオケの地区大会で優勝したことあるからね。』
 『シャイなのに、よくそんなんに出られたね!すごいよシャイアン!』

 ザザえもんは、目を輝かせた。

 『なにしろ、勧めたのが僕だからね。だから優勝賞金は、僕のものでもあったんだ。』
 『ピノ太くんのが、すごかったぁ!』

 ピノ太くんは、ちょっとSっ気のある未来少年だった。


 そのとき、

 『ザザえもんはほんとうに、ヘタレな過去型ロボットだなぁ。』

 笑いながら、ピノ太くんが言いました。



 ………へ・た・れ!?



 へたれ――――――――っ!!!?



 ナナのこころには、懐かしき場面が押し寄せる。


 (その言葉、辞書引いてなかったよ――――――――っ!!)




 『ほんとそうなんだよぉ。ピノ太くんがいないと、おいらもうダメダメだよぉ。』
 『あはは。』

 アニメは続いているが、ナナの感動は相当なものだった。

 (辞書買ってもらったのに、引き忘れてたよ!でも、ザザえもんと一緒なら嬉しいよ!ありがとう、ザザえもん!!)

 感動ひとしきりのナナを、花子はキョトンと見上げている。


 『まぁ、ザザえもんにしては、シャイアンに歌声を披露させるなんて、よくやったほうだよ。ホットケーキ焼いてあげるよ。』
 『ピノ太くん、優しい!』

 なんだか、はしゃぐザザえもんとピノ太くんは、部屋を出ていったので、

 『後半へつづく!』

 コマーシャルに入りましたね。




 (おわぁあ!ザザえもん、ファイトだよ!)
 テレビに、こころからの声援を送っていたナナは、


 「おい、」


 声を掛けられた。




 はっとして見上げると、

 「なんで気付かねーんだ?」

 ちょっと不機嫌になって、薔はナナを見下ろしていた。



 (ぎゃあ――――――――――――っ!!)


 「すみません!いま、ザザえもんにあつき声援を送ってました!」
 「あ?」

 なにげに、不機嫌ではあるが、寄り添っている花子のあたまをやさしく薔は撫でております。



 「まぁ、いい。来いよ。」
 「は、はい!」

 きちんとテレビを消したナナは、薔と花子とキッチンへ入っていったのでした。




 「すごぉ!こちらすべて、薔が作ったんですか!?」
 「当たり前だ。」



 「ワン!」
 …――気づいていようが気づいていまいが、些細だってなんだって、こうしていると私たちは、家族なんだなって想うよ。

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