第38話:Game(is Over?).32





 「ちょっと!もう、走れませんて!」

 テレビ局を出るまえに、ナナは息を切らしております。


 「おまえは、セックスにしか体力使えねーのか?」
 「ぎゃあ!」

 薔は余裕であるが、

 「ちょっと、待ってください、わたし、指輪外します、」
 ナナはゆびに手を掛けた。


 しかし外すことなく、

 ひょいっ

 薔に、お姫様だっこをされた。



 (ぎゃあ――――――――っ!!)




 「重いですから、いいですってーっ!!」
 「おまえを抱くちからなら、いつだってあんだよ。」


 ……えええ!?




 そんなこんなんで走っているふたりは、チラチラと振り向いたりしている関係者だかにはお構いなしに、


 パッ―――――…


 日差し降り注ぐ、外へと飛び出した。




 「わぁ!眩しい!」
 すこしだけナナが顔をしかめると、


 「きゃあ!いたぁ!」


 黄色い悲鳴が、聞こえた。




 (はい…………?)
 ナナだけそちらを見ると、

 「ちょっと!ほんとスゴイよ!」

 すでに、局の外で待っていた群集があった。




 (えええ!?)
 びっくり仰天のナナですが、


 「きゃあ――――――っ!!」


 群集は、群がろうとした。



 「なんだ?あれは、」

 薔は特に、慌てる様子もないのだが、



 「ちょっと待った―――――――っ!!」



 群がろうとする群集の前に、立ちはだかった集団がおります。





 「薔さまと三咲さんの邪魔は、させないわよ!」

 一度、邪魔しかけたこともあるんだけど、とにかくふたりの母校の女子生徒達が、群集を取り押さえようとしております。


 「あの人…、」
 見覚えがありすぎるナナは、戸惑いもした。


 「なかなか、やるな。」
 薔はやはり、落ち着いて全速力です。




 でもこれは、多勢に無勢だよ。


 と、思われたのだが、


 「位置につけ!」


 なんか、警察が登場しちゃったよ。




 だれが呼んだの?というお話ですが、


 「残念でした。」


 ニヤリとして言ったのは、まさしくあのとき、センターを陣取っていた女の子だった。


 「あたしのパパ、警視庁の警視正なんだから。」






 「果蘭(からん)〜、お父さんは、けっこう忙しいんだよ?」
 いささか、愚痴気味のパパうえですが、
 「パパ、頼りにしてる!」
 娘は、腕を絡ませた。



 「これより先は、蟻んこ一匹通さ〜ん!」

 パパうえは、めちゃくちゃ気合いが入った。








 そして、ナナを抱えた薔が走っていると、


 キィッ――――…


 目の前に、黒いベンツが停まったのでした。



 「はやく乗ってぇぇ。」

 こけしちゃんが、手を振っていて、

 「こけしちゃーん!」

 大感動したナナは、まずさきに、車へと乗り込まされたのでした。








 先ほどまでの騒動が、遠くなってゆく。

 景色は、ゆったりと流れている。



 「ナナちゃぁん、いっこ食べるぅ?」
 こう尋ねたこけしちゃんは、丸いカステラのようなものを差し出した。

 「なんですかな?これは、」
 「ザザえもんの、人形焼きだよぉぉ。」

 ………ざざ?

 「メープル味で、美味しいよぉ。」
 こけしちゃんは、にっこりと、それを手渡しました。



 「あ、ありがとう!」
 「よかったらぁ、薔くぅんと、半分こしてぇぇ。」
 にっこにこの、こけしちゃんです。




 「ゾーラ先生ぇ、半分こするぅ?」
 つぎにこけしちゃんは、隣の醐留権へと尋ねており、
 「ぜひ、頂こう。」
 笑って答える、醐留権。




 (なんかこれ、すんごいヘンな形してるね!)
 興味津々で、ザザえもんを見つめていたナナは、


 ……………はっ!!


 とした。



 ゆっくり、顔を隣に向けてみると、


 「………………、」


 シートにふんぞり返っている薔は、またしても不機嫌そうにナナを見つめている。




 (ぎゃあ―――――――――――っ!!)




 「今のは、なにが、いけませんでしたぁ!?」
 「んなモンと、見つめ合ってんじゃねーよ。」

 ……だって、これ、カステラですけど!




 「では、半分こしましょう!」
 「あぁ。」

 ナナは、一所懸命に、半分こしようとしたのだが、


 ボロッ


 5等分くらいに、なった。



 「あああ!」
 「なにやってんだ?かわいいな、」




 前の席で、こけしちゃんは醐留権とコロコロ笑っていた。

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