第38話:Game(is Over?).32





 ナナは、387歳にして生まれて初めて、テレビ局に来ております。


 用意された控え室があり、しばしの間、薔とは別室になる。


 …予定だったが、同室に連れてかれちゃいましたね。


 やたらドキドキしているナナは、スタイリストの質問責めだかに遭いかけた。

 しかしスタイリストは、とてもお優しいオネエ系の男性で、救われたのだった。


 しかし、オネエ系の男性に、薔のスタイリストを任せていいのかは、いささか疑問である。








 ナナと薔は、テレビ局に入れたが、こけしちゃんと醐留権は入れなかったので、テレビ局のまわりを警備することにした。


 「ゾーラ先生ぇ、あたしねぇ、あとでザザえもんの人形焼きを買いたいのぉぉ。」
 「あはは、桜葉、君は余裕だね。」

 そんなこんなんをしているふたりの目の前、


 「くそぅ、あの薔とかいうやつ、ボクの佐江子と付き合うだなんて、殺してやる…、」

 明らかに、異常なオトコがウロウロしていた。



 「佐江子は、ボクだけのものだ…、」

 と言ったオトコは、

 「あれ?」

 こけしちゃんと醐留権に、目を向けた。

 その目は、かなり血走ってギラギラしていた。




 「なんだよ、ボクに、見せつけてるのかよ…、」

 その不気味な目を見開いたオトコは、


 「ボクはなあ、見た目いいやつが一番嫌いなんだよお!」


 なんと、よれよれのジーンズからナイフを取り出して、突進してきたのだ。




 「桜葉、君は逃げなさい!」

 醐留権は、こけしちゃんを突き放す。



 そのとき、

 「それはまさしく、ひがみよぉぉ?」

 突き放されたこけしちゃんは、ニコニコと異常オトコに言い聞かせてから、


 ぺちっ


 手刀で、ナイフをいとも簡単に振り落とさせた。




 んでもって、


 「やぁぁっ。」


 見事なまでに鮮やかに、そのオトコを背負い投げしたのだ。




 ダン!

 地面に叩きつけられたオトコは、

 「う〜ん……」

 伸びた。




 「見た目以前に、中身がてんで駄目ねぇぇ。」

 ニコニコ顔でこけしちゃんは、スカートの裾を払って、



 「これからいいとこなんだからぁ、おとなしくそこで、くたばっててぇぇ。」



 キュートに、にっこりと、伸びているオトコに言い放ちました。


 あたまの周りに星が飛んでいるそいつには、このキメゼリフは、届いていなかった。



 醐留権には、ちゃんと届いていたけどね。





 「さ、桜葉、君は一体…、」

 その姿を見て、醐留権は息をのむ。


 「ゾーラ先生ぇに、恥ずかしいぃとこ見られちゃったのぉぉ。」
 こけしちゃんは、なんだかしょげ返っているが、

 「なにを言っているんだい?素晴らしいよ、惚れ直してしまったよ。」
 醐留権は、やさしく言ったので、


 「ほんとぉぉにぃ?」


 パァァと、こけしちゃんの表情は輝きだす。



 「助けてくれて、ありがとう。」

 歩み寄った醐留権は、こけしちゃんの肩を抱いて、


 「どぅぅいたしましてぇ。あたしねぇ、物心ついたときから、柔道習ってるのぉぉ。」

 ほっぺたをピンク色に染めたこけしちゃんは、明かしたのでした。




 ザ・こけしちゃん豆知識。






 ふたりが寄り添って歩いていったあと、


 「ギャー!なんか、ヘンなの倒れてるーっ!」


 ようやく駆けつけた警備員の手によって、異常オトコは連行された。

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