※第37話:Game(from Back).31





 「ほら、続けろよ、」

 しばらくナナが見とれていると、月光を浴びている薔は、流れるように彼女を見つめ、そっと囁いた。


 「あ、はい…、」
 我に返ったナナは、再び彼の背中にくちびるを押し当てる。

 「ん………あ…っ、」
 血の流れとくちびるの動きに反応して、薔はカラダをときどき、ビクッとさせる。


 「ふぁ…っ!」
 血液の快感によって、ナナは一度達した。

 「イったのか?」
 熱い息を吐く薔に、視線を送られ、問いかけられて、
 「は、はい…、」
 振り絞って返事をしたが、まだ疼いていた。


 ツ――…

 だんだん、血も傷口も消えてきていたが、まだ完全ではないので、ゆっくりと舌で、すべて払拭するように。

 「あ……ぁぁ…っ、」

 甘い声をあげている薔は、左に顔を向け頬を窓に当てて、せつなげに息をしていた。



 「は…ぁっ…、あ…、はぁ…っ、」
 やがて顔を上に向けて、淫れた息を吐きつづける薔から、傷も血も、キレイに消え去った。


 ビクン―――…

 またしても達したナナは、ゆっくりとくちびるを離す。
 脱げてはいなかったシャツが、まるで模様みたいに、あかく染まって。


 「はぁっ………はぁっ………」
 窓に倒れるようにして、薔は激しい息をつづけている。


 「あの…、薔?」
 すっと伸ばした右手で、彼の髪をやわらかく撫でながら、ナナはやさしくその名を呼んだ。

 「ん…?」
 うっすらと開けた瞳で、薔はナナへと視線を向ける。


 「えと、」

 そしてナナは、微笑んで、こころから告げたのでした。



 「生きててくれて…、生まれてきてくれて、ほんとうによかったです。ありがとう。」



 と。




 「なぁ、ナナ…、」

 すると、薔も返しました。


 「そう想えるのは、おまえが生きてて、生まれてこれたからだろ?」



 「はい、そうです、」
 ナナは目をぱちくりさせながらも、髪は撫でつづけており。

 「そのことにまず、感謝しろよ?」

 薔は、微笑んだ。



 「あ、はい!」
 ナナの表情は、パッと光と熱を帯びて、

 「つまりは、俺だって、どっちも想ってんだ、」
 こう囁いた薔は、ゆっくりナナに向き直ると、


 「ナナ、ありがとな…、愛してるよ。」


 月明かりを背に、力強く告げたのでした。




 「うぇぇ……」
 思わず、ナナはうれし泣きをし出す。

 「かわいいが、そんな、泣くな。」
 薔は両手を彼女の頬に当てて、涙を拭い始める。


 「だっ、て……」
 うれし泣きを続けようとしたナナだったが、

 チュ

 突然、やさしくキスをされた。



 唖然として、ピタリと泣き止んだナナを抱きしめて、その頬の涙を、薔は舌で拭う。

 「んぁ………」
 ビクッとしてしまうナナは、彼の背中に両手をまわしてしがみついた。




 スッ――――…

 やがて、ゆっくり薔は離れてゆき、

 「ナナ…、」

 窓に背中を当てると、すこしだけ首を傾げて、囁きかけたのでした。



 「今度はまえから、やってみるか?」

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