※第37話:Game(from Back).31
「あ……、」
もはや、なにがなんだか、熱い息を吐くナナは言葉に詰まってしまった。
そのとき、
「おまえ、」
プッ―――…
腕から滑り落ちたあと、なめらかに撫で上がっていった薔のゆびさきは、ナナのくちびるをそっと弾いた。
「このかわいいくちびるで、今まで何人に噛みついたんだ?」
「ぇえ?」
数えたこともなかったナナは、びっくりしていた。
「えーと、」
思い出して数えてみようとしたが、到底無理である。
「ほぼ、365日だかが、387歳ぶんなんで、」
け、計算機を、ください。
とっさにこころでそう思った、ナナの耳もと、
「悔しい、」
はっきりと、薔は口にした。
「えっ―――…?」
ナナは果てしなく、ドキンとしていて、
「おまえが、俺以外に噛みついてたなんて、考えただけで、狂いそうだ。」
くるしげに息をして、つづける、薔。
「で、でも、噛みついた回数でいきますと、薔がダントツの一位です!というか、二回以上噛みついたのは、薔だけです!」
息づかいがエロティックなので、ドッキドキのナナは大必死である。
すると、
「なぁ、ナナ、」
細くしなやかなゆびさきで、彼女のくちびるを撫でる薔は囁きかけたのでした。
「今までのぶん、消えてなくなるまで、俺に噛みつけよ。」
と。
「えええ!?絶対に、やです!」
思わずナナは、薔の腕をすり抜け、逃げようとした。
グイッ―――…
しかし、すぐさま腕を掴まれて、
ギュッ
後ろから抱きしめられた。
「どこへ行くんだ?」
「いや、どこにも、行かないですけど、」
タン――――――…
抱きしめたまま、窓に押し当てられた。
「はぁ………」
熱い息を絡めあって、ナナの両手は窓に当てたまま押し上げられてゆき、撫でまわすように薔の細長いゆびが手のひらを這う。
「それとも、セックスに、するか?」
くちびるが、触れ合いそうな距離で。
「あ、噛みつくより、そちらの方が、断然いいです。」
「っとに、おまえは、エロい女だな。」
……………えええ!?
「なにをおっしゃいますーっ!?」
真っ赤になったナナですが、状況をよく、考えてみたほうがいいよ、うん。
キュ――…
重なるように、高く押し上げられた腕から熱が伝わりゆく。
「でもいまは、噛め。」
ナナの目の前で命じる薔の髪はまだすこし濡れていて、やたらはだけた彼のシャツから胸元はけっこうあらわになっている。
「ええ!?さっきいっぱい噛みました!」
「だめだ。」
ナナの両腕を撫で落ちていった彼の両手は、髪を梳くように愛撫しており、
「いま、すげぇ、噛みつかれてーんだよ、おまえに。」
薔は妖しく微笑んだ。
「でも…、」
ナナのあたまは、クラクラとしてくる。
「安心しろ。おまえが噛んだ後は、しばらくすると元気になんだよ。」
言い聞かせるように言った薔ですが、よくよく考えると確かにそうではあった。
「そう、なんですか?」
「あぁ。」
ナナの髪を撫でていた両手は、頬を挟み込んで、
チュ―――…
音を立てるようにしてやさしく、薔はくちづけた。
ちゅっ
何度か甘くキスを交わして、くちびるの感触を確かめあう。
「はぁ…………はぁ……………」
熱い吐息を感じ合いながら、つよく抱き合った。
チュ、
そのまま、ナナの肩に顔をうずめて、そこにも何度かキスを落としてゆく、薔。
「あ……、」
ビクビクしているナナは、気づかないうちに指輪を外されていた。
「はぁ――――…」
深い息を吐いて顔を上げた薔は、その指輪をスウェットのサイドにしまい込む。
そして、問いかけた。
「たまには、うしろから吸ってみるか?」
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