※第37話:Game(from Back).31





 「またのお越しを〜。」

 受付で、ニコニコと手を振る上半身ハダカの雅に、

 「二度と来るか。」

 きっぱり言い切った薔と、やたら真っ赤なナナは、ホテルを後にした。


 「えええええ!?」

 雅はなにかを叫んでいたが、ふたりは振り向きもせずに。







 「わぁ!もうけっこう、遅いんですね!」

 ときは、真夜中。


 「あんだけヤってりゃ、当たり前だな。」
 「うぎゃああ!」
 
 思ったことを口にしたナナは、普通にこう返されて真っ赤っかになった。


 「そ、それより、あの!」
 「なんだ?」
 ふたりは手を繋いで、星空の下、会話をしております。

 「出逢ったときから想ってましたが、薔はとんでもなく、いい匂いですよね!」
 「そーなのか?」

 ……………えっ?

 「香水は、なにを使ってらっしゃるんですか?」
 「んなモン、あんま使ってねーぞ?」

 …………ええっ?


 「じゃあ、なぜにあんなにも、いっつもいい匂いなんですかあぁあ――――――っ!?」
 「あ?」


 びっくり仰天の、ナナさんでした。








 寄り添って歩き続けて、やがて薔のマンションへとたどり着いた。


 入り口にて。


 「あの…、」

 手を繋いでいるふたりに、恐る恐る声を掛けた人物がいる。



 振り向いたナナと薔の後ろには、


 俯いて縮こまる、沖里が立っていた。





 「なにしに来た?」

 低く鋭い声の、薔の隣で、

 ギュ―――…

 ナナは彼の手をつよく握りしめる。



 そして、


 「帰ってください。」


 はっきりと、静かな怒りに満ちて、言い放ったのだった。



 「ナナ?」
 さっきとは打って変わって、やさしい声で薔は彼女の名前を呼ぶ。

 「……………。」
 沖里は、黙っている。


 「このひとを、これ以上、傷つけたり苦しめたりするのは、わたしが許しません。何としても阻止します。帰ってください。」
 ナナの声色は、いつになく、鋭く厳しいものになった。



 「帰って!」


 とうとう、抑えきれずにナナが叫んだ瞬間、


 「謝りに、来たんだ。」


 沖里は、告げた。




 「はい……?」
 つい叫んでしまったナナは、キョトンとする。

 「なにをだ?」
 すると次に、薔の声色が鋭く厳しいものになった。


 「僕は、君を、とても汚い手口で利用してしまった。本当に、すまなかった。申し訳ない。」
 沖里は、深々と頭を下げる。


 「何と言っても、謝りきれない。償うためにも、事務所は畳むよ。」
 頭を下げたまま、こう言った沖里は、


 「それじゃ償いに、なんねーだろ。」


 薔の言葉に、頭を上げた。





 「キサマが犯した罪は、こいつを傷つけたこと、それだけだ。」

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