※※第36話:Make Love(Climax).4




 「ん………う…………」

 そのまま、熱いキスを交わしていると、



 突然、再びベッドサイドで充電していたナナの携帯が、枕元で着信を告げた。




 「んんっ……?」
 ナナだけ驚いて、

 「出ていいぞ?」
 くちびるを離した薔は、彼女の首すじを撫でて言う。




 「ありがとうございます、きっと、こけしちゃんです。」
 枕元に置いてあった携帯に、片手を伸ばしたナナが手にして開いてみると、本当にこけしちゃんからのお電話でした。

 充電器を、外して。



 「もしもしっ、」
 電話に勇んで出たナナはベッドに仰向けで寝ており、隣で片肘をついて横になる薔は、左手で彼女の髪を撫でながらやさしく見つめている。
 そしてさり気なく、先ほど外したナナの指輪を薔はやさしく奪いとって、すーっと彼女の指にはめていった。



 『ナナちゃぁん?』

 懐かしき、こけしちゃんのやんわりした声。


 「こけしちゃーん!!」
 ナナは嬉しくて、声を張り上げた。


 『よかったのぉ。ずぅっとお電話通じなかったからぁ、心配してたのぉ。』
 「ごめんね、こけしちゃん!そして、ありがとう!」
 なんだかナナは、うるうるし始めた。



 『いまぁ、どこにいるのぉ?』
 「え?えーとね…、」

 なんと説明したらよいものか、ナナが思案していると、



 カプ――…



 突然、彼女の左耳を、薔が甘噛みしたのだ。




 「んあぁぁ…っ、」

 携帯を右側に当てたまんま、ナナはかなりビクッとした。









 『ちょっ、どこ噛んでるんですかあぁ―――――っ!?』

 ナナの絶叫は、携帯越しだが、ベンツの車内にもけっこう響いた。




 「すごぉく、嬉しそぉぉな声なのぉ。」
 こけしちゃんはにっこにこと、携帯を離して耳のなかに人差し指を入れている。

 「あはは。マンションにはいなかったが、これは既に、たどり着けていたようだ。」
 運転席で、醐留権も嬉しそうに笑っている。



 『やっ、あの、そんなとこ…っ、んぁっ…!』



 絶叫は、甘ったるい声になった。








 クチュ―――…

 もはや、耳輪のなかに舌すら入れられていた。


 「あ、の、いまっ、でんわ、ちゅ…っ、なんで…、」
 ビクビクとするナナは、それでも携帯を右耳に当ててはいる。

 そんでもって電話の向こうで、こけしちゃんはコロコロと笑っていた。
 しかも、だれかと一緒にいる様子である。



 「もうっ、」
 いったん携帯からちょっとだけ離れたナナは、頭をまわして隣の薔を見たのだが、

 クスッ

 と彼は笑って、両手でそっとナナの顔をもとの位置に戻したのでした。



 「え、えーと、」
 その仕草やらなんやらにドキドキしまくっているナナは、電話に意識を向けようとするのだが、


 ふぅっ―――…


 吐息を左耳に吹きかけられてしまい、できっこなかった。


 「あぁぁ…っ、」

 ビクッとふるえた、ナナです。









 『んもうっ、困りますって――――――っ!!』

 またまた、ナナの絶叫はベンツの車内に響いて、

 「こっちもぉ、困っちゃうのぉぉ。」

 さっきとおんなじカッコのこけしちゃんは、にっこりと笑った。



 「桜葉、もう心配いらない。私たちも野暮は、やめておこう。」
 「はいぃ。」

 こけしちゃんと醐留権は、笑いあって安心して、


 「じゃあぁ、ナナちゃぁん、ごゆっくりねぇぇ。」


 やさしくキュートに言った後、こけしちゃんは電話を切った。



 『ありがとこけしちゃん!』

 切れる直前、それでもナナはこう叫んだ。




 パタ――…

 にっこにこと、携帯を閉じたこけしちゃん。


 「ほんとぉに、よかったのぉ。」
 ほっぺたをピンク色に染めて、喜んでいる彼女へ、

 「桜葉、私たちもこれから、ドライブしないか?」
 醐留権が、やさしく提案した。



 「いいのぉぉ?」
 「君こそ、明日は寝ていられないが、大丈夫か?」

 ベンツは、夜道の街路樹を照らし出している。



 「むしろ明日ぁ、ますますちから出るかもぉぉ。」
 「あはは、それは良かった。飛ばしてくかい?」

 醐留権のこの誘いに、


 「ゾーラ先生ぇ、ここねぇ、制限速度40キロなのぉぉ。」

 ほっぺたに手を当てたこけしちゃんは、にっこりと応えた。



 「では、君のためにも、安全運転で行こう。」
 「運転は安全でもぉ、こころは危険よぉ。」


 はい、こちら様もなんだか、いいコンビでした。




 漆黒のベンツは、ゆっくりと夜の車道を駆け抜けていった。

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