※※第36話:Make Love(Climax).4








 …――いままで、ずっと、だれにも見せずに、生きてきたのでしょう。

 でも、ちゃんとあなたは、あの日わたしに、見せてくれたんです。


 思えば、あの日、恋に堕ちたと気づけたので、わたしの前でなら泣いてもいいと、言って差し上げたいところですけど。







 「…っ、…ふ……っ、」

 ナナにしがみついて、薔は泣きつづけていた。

 自分も泣きたいのを必死で堪えるナナは、その痩せた肩を抱いて、やさしくあたまを撫でている。


 ふと、

 「ナナ…、」

 ふるえる声で彼女の名前を呼んだ薔は、

 ス―――…

 ナナの肩に両手を置いて、ゆっくりとからだを起こした。



 「よく…、見とけ…、おまえにしか、見せねーから……」
 ふるえながらこう言った薔はまだ、とめどない涙を流して俯いているが、

 「ちゃんと、見てますよ?」
 やさしく言うと、ナナは両手を彼の頬に当てて、涙を一所懸命に、拭い始めた。



 やがて、すこしずつ顔を上げた薔と、ちゃんと向き合って、見つめ合う。




 「ひでぇ、モンだよな…、」
 「何を言いますか?ほんと、かわいすぎて、困っちゃいますよ。」
 ナナは素直に、普段から想っていたこのキモチを言葉にしており。

 「かわいいとか、あんま、言うな。」
 「ぇえ?だって、かわいいんですもん。」

 必死で薔の涙を拭っていても、次々と、溢れ出してゆく。



 「まぁ、おまえになら、言われても、いいよ。」

 ナナをまっすぐ見つめて、薔は泣きながら笑った。



 ずっと、そうやって、向き合っているうちに、


 ツ―――――…


 とめどない愛おしさが涙となって、自然とナナの頬へも伝い出した。



 薔は、彼女の肩に置いていた手を頬まで伸ばして、その涙を拭いながら、


 「きっと、分け合ったんだな…、」


 やさしく微笑んで、言いました。



 「止まってきた……」




 本当にその通りで、涙は次第に穏やかになってきた。




 そして、きれいに今は、流しきったのでしょう。







 コツン―――…

 ふたりは、また、おでこをくっつけあった。


 「あついな、」
 「これであつくないほうが、おかしいですって。」

 真剣に述べるナナのまえ、薔はクスッと笑って言った。


 「やっぱ、かわいいのは、おまえの特権だよ。」

 「えええ?それも、おかしいですって。薔も、もんのすごく、かわいいんですって。」




 熱いひたいと同時に熱い息も、触れ合う。



 「ナナ、」
 「はい、」

 それはまるで囁きあうようだが、至極はっきりと、

 「ありがとな。」
 「こちらこそ、ありがとうございます。」

 伝えあってから、すこしだけ顔を離しました。


 ナナを見上げる薔が微笑みかけた後、


 チュ―――…


 ふたりはそっと、くちびるを重ねたのでした。

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