※※第36話:Make Love(Climax).4





 「ねぇ、頼むから、エロい声とか出してよ。」
 「だれが出すか。」

 落ち着き払っている薔に反して、雅は焦りだす。


 「エロい声聞きてーなら、感じさせてみろよ。」

 薔のこの挑発に、


 「じゃあ、噛みついてやるよ。」


 雅は、その気になった。




 このとき、ナナはふと、以前母が口にしたセリフを思い出した。






 スッ――――…

 雅は薔の首もとへ顔を近づけると、


 ガブリ――――…


 牙を立てて、噛みついた。



 「………っ!」

 激痛にすら、薔は微かな息を吐いただけだった。



 ナナは泣きながら、張り裂けそうなこころで、はやく終わることを祈りつづける。




 ガバッ

 真っ赤なくちびるで起き上がった雅は、


 「すげ!これ、F・B・Dだ!」


 息を荒げて、叫んだ。




 その瞬間、

 「おい、」


 薔は命じた。



 「はやくどけ。」





 「あ、スミマセン、」

 大人しく雅は従って、ベッドから下りる。



 「それから、こいつの携帯とリモコンを出しとけ。」
 「かしこまりました、」

 これにも従って、ちゃんとナナの携帯とリモコンを取り出した雅のまえ、


 ビリッ


 両手首を縛り上げていた自身のシャツを、薔は引き裂いた。



 首もとから血を流す彼は、ゆっくり起き上がると、

 「よこせ。」

 堂々と座って、片手を出した。



 「どうぞ、」
 その手に携帯とリモコンはちゃんと、渡されました。




 「すこしだけ、この部屋借せ。キサマはもう下がっていい。」
 「わかりました、すみませんでした!どうぞごゆっくり!」

 やたらかしこまって、雅は頭を下げる。



 部屋を出ていく手前、


 「鍵持ってんなら、ちゃんと掛けてけよ?」

 薔が付け足したので、


 「わ、わかりました!」


 カチャ


 ご丁寧にも、部屋を出た後、雅はちゃんと錠を掛けていったのでした。









 「大丈夫か?」

 すぐに薔は、ナナを縛り上げていた延長コードを丁寧かつ迅速に、解き始める。

 「うぅぅ…っ、ごめっ…さい……、ごめんなさいぃ……」
 「なんで謝んだ?」

 泣きながら謝るナナは、すぐに解放された。



 「ここも、抜くからな。」

 そして、バイブレーターも、ちゃんと抜かれたのでした。




 そっと薔は、抜いたソレを自身の裂けたシャツにくるみ込んで、後ろに隠した。
 ちゃんとジーンズも、履かされました。



 「うわあぁぁぁあん!」

 解放されたナナは、ベッドのうえに座り込み、顔を覆って泣きだす。



 「ごめんな?怖かったな、」
 目の前に座って、そのあたまを撫でながらやさしく薔は言うのだが、

 「ちがっ…、ちがう…ん…っ……です………」

 辛いのはわたしじゃないんです、その言葉は嗚咽にかき消されてしまう。




 「大丈夫だ、もう、怖くない。」

 やがて、薔は、泣きじゃくるナナをそっと抱きしめて、背中をさするように撫でていったのだった。

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