※※第36話:Make Love(Climax).4






 バタン――――…

 205号室に薔が着いたのは、電話のあと20分も経たないうちにだった。


 「ナナ?」

 名前を呼ぶ彼は、珍しいことに息を切らしている。


 部屋は、真っ暗だった。



 手探りで、薔が明かりのスイッチを押すと、


 縛り上げられたナナはちゃんと服を着ていたが、ダブルベッドの端にぐったりとしていた。




 「大丈夫か!?」

 うえのセリフ、ひとつだけ珍しいことがあるんだが、それはよしとして、薔はナナへと駆け寄る。


 「待ってろ、いま解いてやる。」

 彼がベッドに乗って、ナナの口に縛り付けられていたタオルへ手を伸ばすと、

 「んんん………!」


 なにかを言いたげなナナの瞳からは、涙が流れ落ちていた。


 「大丈夫だ、これならすぐに解ける。」


 シュル――――…


 タオルが解かれた瞬間、


 「逃げてーっ!」


 ナナは叫んだ。





 「あ?」
 しかし次に薔は延長コードへと手を伸ばしていたのだが、



 ドサッ――――…



 後ろから、何者かに押し倒された。




 「やめてーっ!」

 ナナは叫ぶ。




 「おい、」

 押し倒されたが、慌てた様子はまったくない薔の両手首を片手で掴んで、雅が跨ってきた。


 「どけ。」
 やたら低い声で言う薔なのだが、

 「うっわ、ほんとめっちゃキレイな顔!しかも、いい匂い!」

 雅のテンションとかは、上がりまくってます。



 「いーからどけ。キサマにやれる無駄な時間は無え。」
 落ち着いている薔の隣で、


 「んあぁ……っ!」


 突然、ナナがビクッと声をあげた。




 「どーした!?」

 はっと顔を向けた薔の目には、ひどく苦しげに身を捩るナナの姿が映る。


 「あ、それ、バイブ。」

 明るく言う雅の手には、リモコンが握られていて、

 「大人しくしてくれないと、Hiにしちゃうよ?」

 非常に楽しそうに、笑った。



 「んああぁ…っ、」

 ナナはビクビクと震えてはいるが、


 「ダメ……っ、わたしは…………大丈夫、だから…ああっ………」


 泣きながら、声を振り絞る。






 「わかった、はやくそれ、止めろ。」

 すると薔は、雅に向き直って、


 「俺を犯すなら、止めてからにしてくれ。」


 はっきりと言いました。





 「予想外に、健気なんだね。」

 ちゃんとスイッチを切った雅は、リモコンをワイシャツの胸ポケットにしまい込んだ。


 「なんかすごく、血も美味そう。」



 このとき、コイツはヴァンパイアなのだと知った薔は、


 「へぇ、」


 余裕の笑みを見せた。




 スッ、

 両手首を掴み上げて、かがみ込んだ雅は、


 チュ――…


 無抵抗でいる薔へと、くちづける。



 「お願いだから、やめて!」

 叫ぶナナは、コードを解こうと必死でもがいた。



 音を立てながらキスをして、雅は片手で薔の胸元をシャツのうえから弄っている。


 「やめてってばーっ!」

 ナナは泣き叫ぶ。





 すると、

 チュプ―――…

 くちびるを離されたとき、


 「ナナ、」


 言い聞かせるように、薔はやさしい声を出した。



 「大丈夫だから、絶対に暴れんな。きれいな手首に、痣ついちまう。」





 「え――――…?」

 動きを止めた、ナナ。




 しかし、

 「なにが大丈夫なの?」


 ビリッ――…!


 そう言った雅は、薔のシャツを片手で引き裂いた。




 「わぁああああっ!」

 再びナナは叫び出したが、


 「大丈夫だ、ナナ。」


 落ち着かせるように、薔はまたしてもやさしく言い聞かせる。



 グイッ―――…

 そのまま裂けたシャツを脱がそうとした雅は

 ギュ―――…

 脱がす手前、それで薔の両手首を縛り上げた。




 「からだもめちゃくちゃキレイじゃん。キスも上手いし。」


 ツ――――…


 かがみ込んだ雅の舌が、薔の首すじをすべり落ちてゆく。

 それと同時に胸元を弄っていたが、薔はびくともせず、声も息も上げはしなかった。

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