第35話:Game(=Family).30
…――その夜。
花子のお散歩にふたりして行ったり、まだ料理できないナナに薔が色々作ってあげたり、んまぁ、別々にお風呂に入ったあとリビングで花子も一緒にじゃれあったりしてから、ベッドに入ったのでした。
ふたりのベッドシーンだかのまえに、とき同じくして、パソコンと真剣に向き合っている男がいた。
素早く動くゆびさきが、目では追えないほどの高速でなめらかにキーを打つ。
タン―――…
ふと、手を止めて、
「ほう、」
呟いたその男は、醐留権だった。
「あの子は以前も、モデルをやっていたのか、」
画面に目を走らせてから、眼鏡をクイッとあげて、
「もう少し、詳しく調べてみよう。」
再びキーボードを、超高速でたたき出した。
やがて、ふと、
「…は?」
手を止めて、画面に見入った。
「なんだ?この事件は、」
醐留権の肩は、わなわなとふるえだす。
「私は教師という人柄上、こういう事件はとくに許せんのだよ。」
キッと、画面を見据えながら、
「この事件、何らかの形で関わっているように思えてならないが、私の口からは話せないな。」
苦しそうに呟く。
「せめて、」
そして表情を和らげ、悲しそうに画面を見つめる醐留権は、
「加害者側に会って、事態をややこしくするより、」
力強く、言いました。
「この、“夕月”という人物、会ってみる価値は大いにありそうだ。」
―――――…
ベッドサイドの、薄明かりは照らし出す。
ギュ―――――…
ナナは毛布のなか、薔に抱きしめられていた。
向き合って、鼓動と吐息が伝わって、こころ安らぐいい匂いなのだが、とてもじゃないが寝れたものではなかった。
「あ、あの……、」
「ん?」
ふるえながら話しかけたナナは彼のTシャツを着ており、この間の買い物で一通りは揃えてあったので、ちゃんと下着もつけております。
「わたし、もんのすごく、ドキドキしてるんで、うるさいんじゃ、ないですか?」
腕のなかで、こう尋ねたナナですがね、
「大丈夫だ、俺もしてる。」
普通にこう返してきた薔は、彼女の髪をそっと撫でました。
「えええ?大丈夫ですか?」
とっさに体を起こそうとしたナナだが、
ぎゅっ
さらにやさしくつよく、抱きしめられていた。
「離さない。」
「んぁ……っ、」
耳もとではっきりと言われたナナは、ビクッとなった。
だが、
「ナナ、」
薔は、こうつづけたのでした。
「血…、飲まねーか?」
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