第3話:Game.1



 下駄箱。

 ここまで辿り着ければ、もう問題ない。
 ナナは早く帰ることに専念していたので、勢いよく下駄箱の蓋を開けた。


 バサバサッ――――…


 と、同時に、“何か”があふれだすように床に落ちた。

 (何、これ…………?)

 怪訝に思ったナナは、かがんで“それ”の一部を手にする。

 それは、たくさんの“写真”であった。しかもすべて、同じものである。

 写真をおもてにしたナナは、息をのんだ。




「なんで…………………?」




 その写真には、ナナが吸血行為中の姿が、鮮明に写し出されていたのだ。




 (これは……………、この写真は……………、「あのとき」のものだ!)




 吸われている側の人間から、すぐにいつのものか特定できた。

 それはまさに、ナナが薔に目撃された、あのときの写真だった。





「どうして、こんなものが…………?」
「写メったからだ。」

 で、

「でぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」

 後ろから声がして振り返ると、薔が立っていた。

「どうしてアンタがここに!?」
「どこのトイレに行く気だったんだ?お前は、」

 ……………………あ。
「え、えーと、公園の、トイレに…………。」
「ならもう二度と、学校のは使うなよ。」

 …………………ひどい。




「行くぞ。」
 しゃがんでいながら、背中のシャツの襟を掴まれた。
「ちょっ、ちょっと、待って!」
「あ?」
「あの、この写真、全部拾ってから行きます………………。」







 “逃亡劇”、これにて(呆気なく)終了。

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