第33話:Game(&Each…).29
「ごめ…っ、ん……なさぃ………」
電話が切れてしまったあとは、肩を抱いてふるえながら、ひたすらナナは謝っていた。
そこへ、
「ナナちゃぁん。」
おっとりにおいての全力疾走で、こけしちゃんが駆け寄ってきた。
「こけしちゃぁーんっ!」
叫んだナナも、必死で駆け寄る。
そしてふたりは、ひしと抱きあったのだった。
「こけしちゃんっ、こけしちゃんんっ!」
こけしちゃんのあったかさが伝わり、またしてもナナは泣きだす。
「ナナちゃぁん、いまはきっとぉ、泣いてもいいんだよぉ。」
こけしちゃんはやさしく、ナナのあたまをなでなでしている。
彼女は、まだ、制服だった。
「うえぇぇ…っ…!」
そのやさしさになんだか安心してきて、ナナはひたすら泣いたのだった。
「うっ…ぅ……、ありがとっ……こけし、ちゃ…っ、」
やがて落ち着いてきたナナは、ゆっくりと顔をあげる。
「親友だもぉぉん、当たり前だよぉ。」
そして見たこけしちゃんは、ニコニコしながらも、涙をポロポロとこぼしており。
「ナナちゃぁん、あたしねぇぇ、駅から来たから理由はわかるのぉ。」
泣きながらにっこりと、そう言った。
「こけしちゃあん…、」
ナナはせつなくなるが、
「だからねぇぇ、ナナちゃぁん、」
ポロポロと涙をこぼすこけしちゃんは、かわいい声を振り絞った。
「あたしがねぇぇ、ナナちゃぁんの、ちからになるからねぇぇ。」
と。
「こけしちゃんっ…、頼もしいよっ、ありがたいよぉ…っ!」
感動のあまり、ナナはうるうるとこけしちゃんにしがみつく。
そのあたまを撫でながら、
「それにねぇぇ、薔くぅんはねぇぇ、やりたくてやってるわけじゃ、ないと思うのぉ。」
言い聞かせるように、こけしちゃんはつづけた。
「え…………?」
泣きはらした瞳をぱちくりさせたナナに、こけしちゃんはあの日の帰り、すれ違った男の話を、聞かせたのであった。
「そいつ、わたしも、知ってるよ…、」
ナナの全身を、えもいわれぬ激しい感情が駆け抜けてゆく。
「おかしな話でしょうぅ?心配いらないって、言い聞かせてたからぁ。」
こけしちゃんもニコニコしてはいるが、肩がふるえており、
「だからねぇぇ、ナナちゃぁんが、薔くぅんのちからにぃ、なってあげてねぇぇ。」
そしてナナの両手を握りしめて、やさしくつよく言ったのだった。
「え?わたしが?」
手を握りしめられたまま、ナナはキョトンとする。
「そうだよぉ。きっと薔くぅんには、ナナちゃぁんしかいないのぉ。」
その手をさらに握りしめ、こけしちゃんはキュートに微笑む。
「それは言われたんだけど、わたしで、なれるのかなぁ?」
控えめに述べたナナへと、
「ちからになるってのはねぇ、ちからじゃなくって、想いなのぉ。」
こけしちゃんも、やっぱり恋する乙女、だれかさんの影響たっぷりのセリフを、言って聞かせたのだ。
…か、感動!!
「ちょっと、こけしちゃん!素敵なことを、おっしゃるね!」
ナナはその手を、握り返しており。
「エヘヘぇ。ゾーラ先生ぇが、言ってくれたのぉ。」
こけしちゃんは、ほっぺたをピンク色にして、はにかんだ。
「おおお!醐留権先生は、さすがだね!さすがはこけしちゃんの、醐留権先生だね!」
んでもってナナは、ふたりの世界に水をさすことなく、ちゃんと醐留権先生、と呼んだ。
「ナナちゃぁん、照れるよぉぉ。」
えへっとしたこけしちゃんは、
「ゾーラ先生がねぇぇ、あたしのちからになるって、言ってくれたからぁ、あたしもちからのかぎり、ナナちゃぁんのちからになるのぉ。」
と、かわいく付け足した。
「素晴らしいね!そして醐留権先生には、こけしちゃんがいるんだね!」
ふたりは、はしゃいでいて、
「だからねぇぇ、」
こけしちゃんはとてもやさしく、言ったのだった。
「ナナちゃぁんのちからにはねぇぇ、薔くぅんがなるから大丈夫だよぉ。」
と、ね。
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