第33話:Game(&Each…).29





 なんだか、胸が締めつけられて仕方なかったが、ナナは公園の入り口付近の塀に寄りかかって、こけしちゃんを待つことにした。



 するとまたしても、携帯が鳴った。




 「?こけしちゃん、もしかして場所がわからないのかな?」

 てっきりこけしちゃんからだと思い、特になんてことなく、携帯を開く。




 「――――――…!」


 ナナは泣きはらした瞳を、見開いた。

 再び全身が、ふるえだす。

 熱を帯びてゆくようだが、おそろしく体中が冷たい。




 「………っ、」

 そのままナナは俯いて、ゆっくりと携帯を、閉じたのだった。




 声が聞きたくて仕方なかったが、なにを言っていいのかがさっぱりわからない。

 それよりなによりくるしくて、さらに泣いてしまいそうで、困らせたくなかった。


 きっと、会えないだろうから、心配なんてかけられない。




 …――わたしがこんなところで、わがまま言うわけには、いかないんだよ。




 ガタガタとふるえながら死に物狂いで言い聞かせるナナは、携帯が鳴り止むのをひたすら待った。












 ――――――…

 「なんで出ねーんだ?」

 携帯をつよく握りしめていた薔だったが、切って静かに腕を落とす。


 そしてテーブルのうえに携帯を置き、椅子に身を委ねた。




 「はぁ――――…」

 顔をあげて瞳を閉じ、ぐったりと深い息を吐く。


 目のまえには、鏡がある。

 そこは、控え室だった。




 「ただ、声が、聞きたかったんだが、」

 ゆっくりと、鏡に顔を向ける、薔。



 「なぁ、」

 彼は鏡を見ていたが、自分を見ているわけではなかった。




 「おまえに繋がんなきゃ、意味ねーんだよ、こんなモン。」


 そしてふっと、消え入りそうに、笑ったのだった。

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