第32話:Game(+Game).28





 この夜。

 ベッドに入ってみたものの、眠れずにいたナナは、枕元に携帯を置いてずっと眺めており。

 かけようかかけまいか、迷っているうちに、時計の針は23時を告げようとしていた。


 眠気はまったく、やってこない。





 そして、時計の針が23時を告げるまえに、携帯が着信を告げたのだった。




 「ひゃあっ……!」

 ビクッとしたナナは、ガバリと起き上がり、携帯を握りしめる。


 そして画面を開くと、

 「あぁぁ……!」

 声を聞きたくて聴きたくて仕方ないひとの名前が、表示されていた。





 「もももももしもし!」
 通話ボタンを押して、携帯を耳もとへ押し当てて、ベッドのうえに正座するナナ。


 『ナナ?』


 それはそれはやさしい、声が響いた。



 ぶわっ

 涙ではない、あふれ出したのは、愛おしさ。


 「そうです!こんばんは!」
 電話越しだというのに、ナナはぺこりとあたまをさげていた。


 『遅くに、悪りぃな。』
 「いえ!なにも悪くないです!薔からのお電話なら、24時時間いつでも、大丈夫です!」

 こう明るく言ったナナの、向こう、薔は確かに、クスッと笑った。


 (えっ………!?)
 果てしなくドキンとしたナナの顔は、真っ赤になる。

 『やっぱかわいいよな、おまえは。』

 笑いながら彼は言ったので、

 「うぎゃあ!恥ずかしいですってーっ!」

 ビクンとしたあとナナは、

 ……はっ!!

 とした。


 「あ、あの、それより、薔、大丈夫、でしたか?」

 途切れ途切れに尋ねると、

 『大丈夫だ、なんも心配すんな。』

 そう言い聞かせた薔は、

 『だが、明日からしばらく、一緒に、行けねーんだ。』

 ただやさしく、付け足した。



 「え?学校に、ですか?」
 『あぁ、悪りぃな。』


 ナナはパジャマのズボンを、ギュッと握りしめる。


 …………どこが、大丈夫なんですか!?



 そして、なにかを激しく告げようとしたのだが、


 『なぁ、ナナ、』


 やさしさに、せき止められた。



 『おまえの話を、聞かせてくれないか?』






 「え?どういった、お話を?」
 激情はおさまり、ナナは目をぱちくりさせる。

 『なんでもいい。ただ、おまえの声を聞いていたい。』


 確かだった。
 薔は確かに笑っていたが、とても切ない、微笑みだった。



 またしてもキュウッと、胸を締め付けられたナナは、

 「わ、わかりました!わたしが行ったことのある国のお話とか、いたします!」

 ものすごく明るく、言っていて。


 『ん、』

 静かに、薔は相槌を打って。


 しばらくふたりは遠くてもひどく近くで、言葉を交わした。
 と言っても、ほとんどナナが話をして、薔はときどき相槌を打つ感じで、ね。

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