第32話:Game(+Game).28





 放課後、です。

 なあんにも問題なく、放課後、やってきました。



 こけしちゃんは、部活へと繰り出していった。





 見送り、手を振っていたナナは、


 「おい、」


 懐かしいんだが、突然、声を掛けられた。



 「ぎゃあ!」
 叫んでから振り向いた、ナナ。

 「帰るぞ?」
 薔は彼女の鞄も持って、堂々とうしろに立っていた。


 「は、はは、ははい!」

 頬を赤く染めて、ともに歩き出す。



 繋いだ手は、あたたかかった。

 幸せで、ほんとうに、こころから。







 外に出ると、朝晴れ渡っていた空には、雲が泳いでおり。

 すこしだけ、風がつよく、吹いてゆく。


 「なんだか、ちょっとだけ、風がつよいですね!」
 なびく髪を押さえたナナの、

 フワリ――――…

 肩を抱いて、薔は言った。


 「俺以外に、見せんなよ。」



 よくよく気づくと、スカートがめくれそうだった。


 バッ


 ナナは真っ赤になって、スカートを押さえつける。

 なんだかそのあとは、もじもじしながらナナが歩き、肩を抱いて隠すようにして薔も歩いていた。







 しばらく歩いたところで、

 「おい、」

 いきなり、薔はだれかを呼び止めた。

 「はい………?」
 顔をあげたナナには、自分のことではないと何となくわかっており。



 「なんでずっと、後付けてんだ?」

 この鋭い質問のあと、


 「なんだ、バレてたのか。」


 後ろから声はして、

 (え…………?)

 キョトンとしたナナが薔とともに振り向くと、まったく知らない男性が、笑顔で立っていた。






 「だれだ?キサマは。」

 凄む薔の隣、ナナは男性の笑顔に寒気を感じた。
 生暖かい、風の中でも。

 「ちょっとね、君とお話がしたかったんだよ、暮中 薔くん。」

 笑いながら言った男性に、

 「んな無駄な時間はねぇ。」


 言い放った薔は、再び背を向けてナナと歩きだそうとした。


 すると、男性は、こう呼び止めたのだ。




 「僕にはあるんだよ、“ソウ”くん。」







 ぴたりと、歩みを止める、薔。

 一瞬つよく肩を掴まれたナナは、激しく戸惑った。

 「…なんでキサマが、その名前、知ってんだ?」

 薔は、静かに問う。




 「その理由を、ここで言ってもいいのかな?」

 男性は、笑っており。



 「なんなんですか!?アナタは!?」

 とっさに振り向いたナナは、怒りをあらわにさせていた。




 「なんだかよくわかりませんが、笑って言うことじゃないと思います!」

 男性を睨みつけて、ナナは声を張り上げる。


 「かわいい彼女さんだね。」
 このとき男性は、ナナを褒めたのだが、


 「話をすり替えないでください!」

 まったく嬉しくなかった。



 「帰ってください!このひとに用があるなら、100年後くらいに出直して」
 「ナナ、」

 ナナの年齢を感じさせるかのようなセリフは、やさしい薔の声によって遮られた。



 「大丈夫だ。おまえ、さきに帰れ。」

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