※第30話:Game(in Bathroom).27





 「おまえ、もっと向こう寄れ。」

 響く声で命じられたナナは、

 「は、は、はは、はい!」

 やたらかしこまって返事をして、背を向けたまま前へ進み出た。




 チャプ―――…

 ナナのうしろに空いたスペースへ、ゆっくりと薔が入ってくる。

 ぬるいお湯はすこしだけ嵩を増したが、からだはおそろしいほどに熱さを帯びた。



 やがて入りきった薔は、


 ギュ――――――…


 うしろから、やさしくつよく、ナナを抱きしめたのだった。







 「あ、の………、」
 「ん?」
 火照って仕方ないナナの耳もとへ、薔は顔をうずめている。

 「タ、タオル…、ちゃんと、巻いたん、ですね……、した…に………、」
 ふるえるナナは、がっかりだか感心だかしており。

 「してねーと、モロに当たるからな、」
 薔はこう言いますが、

 「いや、あの、してても、当たって、……る………、」
 ナナは真っ赤で、熱い息を吐いていた。



 ポタ

 ときどき、水滴が、ナナの肌に落ちてゆく。

 そのたびに彼女は、ビクッとなる。




 「ナナ…、」

 突然、艶っぽく響く声で、名前を呼ばれた。

 「はい……?」
 
 返事をしたナナは、左の耳もとがくすぐったすぎて、高まるばかりで。


 「おまえ、誕生日は、いつなんだ?」


 そのまんまの体勢で、薔は囁きかけた。


 「え…………?」
 いきなりそんなことを聞かれたので、キョトンとしたナナ。

 「ずっと、知りたかった…、いま、聞かせてくれ………」
 囁きをつづける薔は、右手で彼女の濡れた髪をしなやかに撫でる。


 「え、えーと、我ながらちゃんと覚えてるんですが、10月31日です…、」
 けっこう控えめに述べた、ナナ。


 すると、

 「なら、今年から、一緒に過ごせるな………」

 彼女の頬をゆびさきでそっと撫でおろして、

 「よかった………」

 薔は左耳へくちづけた。



 「んぁぁ…………」
 ビクンとしたナナは、顔をあげて熱い息を吐く。

 「ただ、こうして触れあって、感じるのも、悪くねーだろ?」
 耳へくちびるで触れたまま薔は囁いたのだが、その声は濡れたように響いてゆく。


 「あ、あの…………、」
 「ん?」
 そしてナナも、熱く息をしながら、彼に問い返しました。



 「えと、薔の、お誕生日は、いつ、なんですか?」

 と。




 「あぁ、12月24日だ。」

 んでもって、薔はきちんとこう答えました。


 「え…………?」
 耳もとで確かに聞こえたナナは、

 「クリスマス・イヴ、の、日ですよね?」

 と、確かめた。



 「俺の誕生日でも、あんだよ。」


 ……おわぁあ!



 「わかりました!絶対に忘れません!クリスマス・イヴは忘れても、薔のお誕生日だけは、絶対に忘れません!」
 力説したナナに、


 「ん…、ありがと、」


 チュ――――…


 今度は背中へと、薔はキスをした。




 「ふぁ…っ…………!」

 かなりビクンとふるえて、ナナは吐息を荒げる。


 チュ、

 やわらかいくちびるは、そっと背中を何度も刺激する。

 「ぁ………あ……あぁ…っ……………」
 ナナはビクビクと、カラダを捩った。



 「は……っ……………」

 すこしくちびるを離した薔は、深く吐息を零しながら、

 「ナナ……、」

 離したくちびるを背中からすーっと滑りあげて、再び耳にたどり着くと、甘く濡れて囁いた。



 「好きだ………」

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