※第30話:Game(in Bathroom).27





 シャア―――――…

 ナナはとりあえず、シャワーを浴びていた。

 ぬるめのお湯が、熱を帯びたカラダを洗い流してゆく。


 心臓はドキドキと高鳴るばかりで、今の瞬間、ここにいることを考えるだけでも精一杯である。




 (どどどどどうしよう!?)
 そればかり気になって仕方なかったが、ひとりで気にしていても仕方ないことはわかりきっていた。



 キュッ



 シャワーを終えて。


 「そう言えば、お風呂って、沸いてるの?」
 疑問を抱えたナナが湯船の蓋を覗くと、湯煙がほんのりとあがってきちんとお風呂は沸いていた。


 えぇ、ちゃんと遠隔操作できるお風呂でしたよ。



 「え?沸いてる……、」

 バスタオルを巻いて入りたかったが、入った時点では用意されていなかったので、そのまんま入った。

 まだひとりきりなのに、かしこまって固まっているナナです。


 チャポン―――――…

 肩までつかると、ほんとうにぬるめのお湯だった。
 湯船は、ナナ宅に比べたらかなり広いほうだった。

 ナナは、入り口に背を向け、膝を抱えるようにしてすでに俯いていた。









 カチャ――――…

 何も考えていないようで何かを考えていると、バスルームのドアが開いた。


 ドキン!


 ナナの心臓はこわいくらいに高鳴って、沸き上がるかのように頬があかく染められてゆく。

 思わずナナは、湯船に顎までつかっていた。




 シャア――――…

 何も言わないまま、シャワーの音がし出した。


 ドキドキドキドキ


 ナナは、決して、振り向かなかった。

 見たいキモチを必死で堪え、張り裂けんばかりの心臓を抑え、ふるえるほどに熱く、背を向けきっていた。


 (いま気絶しちゃったら、わたし、素っ裸なんだよ!)

 必死で自分に、そう言い聞かせていた。





 キュ

 シャワーが締められたあと、


 「はぁ―――――…」


 吐息は浴室のためもあって、いつもと違うエロティクスに、響く。



 終始ナナは俯いていたが、耳を刺激されすぎて、疼いていた。




 「ナナ、」


 そして、うしろから、名前を呼ばれた。

[ 322/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る