※第30話:Game(in Bathroom).27





 「え……………?」

 ナナは、抱かれたままうつろな目を開いた。


 「洗い流さねぇか?一緒に、」

 甘美な囁きが指し示す、洗い流すものとは、血液、だけなのだろうか?



 「こないだ、入った気が……、」
 旅館のときのこともあるので、言いかけたナナですがね。



 「あんなんじゃねぇよ。もっと、濡れて、感じ合いてぇんだ。」

 はあっ…、と、ゆっくり、薔は吐息混じりの言葉を囁いた。






 「んん…………っ、」
 すでに感じてしまったナナは、反るようにして悶える。


 「まだ、イヤか?」

 やわらかく問いかけてきた薔のシャツをさらに掴んで、ナナはちゃんと答えました。



 「イヤじゃ、ないです………、入ります…………」





 すると、

 「ん、いい子、」

 ナナのほうが果てしなく年上なんですが、こう言われて、よしよしされちゃいました。


 とっさにナナは、真っ赤になった。




 ちゅ

 耳にキスをしてから、薔は離れた。

 が、向きあってから、またくちびるへとくちづけてきたが、甘すぎるほどにやさしいキスだった。



 離れるとき、くちびるを舐めるようにして、

 「ナナ、」

 吐息とともに見つめあって、囁きと問いを交わした。

 「はじめて…、だからな。さきに、行っててくれ。」
 「え?お風呂に、ですか?」

 いや、ナナさん、そこはあえて聞かなくても。


 「あぁ。後から、俺も、行く。」

 ひどく近く、薔は、ナナの胸元へ手を伸ばして、

 プツ――――…

 彼女のカーディガンのボタンを外しながら、ほとんど吐息で囁いた。


 「とりあえずここだけ、外してやる………」




 ナナは赤面してふるえながら、言葉を失っていた。




 ファサ――――…

 数は少ないボタンだったが、外し終えて、


 「行けよ。」


 あたまを撫で下ろされたナナは、頷いておもむろにバスルームへと向かっていった。





 パタン―――――…

 ナナが出ていってから、ほどなくして、花子が尻尾を振りながら入ってきた。

 花子はつぶらな瞳で、夕日が沈みゆく部屋を眺めており。


 「おいで、」


 微笑んでそっと手を伸ばし、やさしく呼びかけた薔は、ソファのうえに身を委ねていた。

 花子は嬉しそうに、駆け寄る。



 キレイなゆびでそのあたまを撫でて、やんわりと見つめながら、


 「花子、」


 薔は呟いた。


 「家族なら、とっくに……、お前も認めてるのに…、な…………、」

[ 321/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る