※第30話:Game(in Bathroom).27




 プツ――――…

 もともとけっこう開いていたシャツだが、ナナに触れたまま、片手で薔はボタンを外してゆく。


 わずかな血がなだらかに、肌を伝い落ちる。



 あとすこしで、外し終えるか、というとき、


 「あの………、」


 ナナは、その手を止めた。




 「く、くちに、してください…………」


 と。






 「おまえは、ここで止めるのか?」
 妖しく笑って見下ろす薔のうつくしい胸元は、ほとんどはだけてあらわになっている。

 「だって、見たい、ですけど……、脱いだら、吸うとこ、きっと、お胸、なんで……………、」
 そんでもってナナは、頬をあかくしながら素直な気持ちを述べていた。



 「まぁ、いい。なら、ちゃんと飲み干せよ?」

 薔はまたしても微笑むと、シャツの状態だのはそのまんまで、今度は激しくくちづけてきた。
 かがみ込んで、頬を挟み込んで、体勢はさっきまでとおなじなのに、明らかに、つよく、荒々しい。


 「んんんっ…………!」
 再び流れ込む血液が、ナナのからだを突き抜けてゆく。

 舐めるために、伸ばす舌へ、薔も舌を絡めてくちびるを押し当てる。


 「ん…………ん…っ…………」
 顎を動かしながら、淫れたキスは過激に音を立てて、深みを増す情緒。


 そして血染めのキスによる(ナナにとって)セックスの最中、

 キュ

 薔は右手でナナのあたまを撫でながら、左手で彼女の右手を掴み、

 ツ―――――…

 はだけている自身の胸元へと這わせた。


 「んっ…………」
 ナナはビクッとしたが、手を重ねた薔はそこを撫でまわさせる。

 広く愛撫していると、ときどきナナの手には硬くなった乳首が当たって。


 支配させるのか、虜にさせるのか、甘い手つきと舌づかいは、淫ら。




 「んん……っ………ん………ん……………」

 おかしくなりそうな激情に襲われながらも、ナナは薔を感じきっていた。




 くちびるをあまり舐めていると傷が消えてしまうのだが、そのことを忘れて夢中になるほど、ゆびさきを乳首へと集中力に擦りあてられており、


 「んん―――――…っ!」


 伝わる感触のいやらしさも含め、激しくビクンとしたナナは、達してしまった。




 「んんん……………」

 飲み干すはるか前に、くちびるの傷はキレイに塞がっていた。




 「んは…ぁっ…………」
 くちびるを離されたナナは、ぐったりとソファに横たえられる。

 彼女の手を握りしめた薔は、自身の肌からそちらも離しはしたが、やさしく握ったままくちびるへのキスは何度かつづけた。




 キスを止めると、

 「はぁ…っ…………は……っ………………」
 火照って仕方ないナナは、


 ギュッ――――…


 熱く抱きしめられた。






 「飲み干せなかったが、」
 ゆっくりナナの髪を梳くように撫でる薔は、耳もとで囁く。


 「支配は、すでに、してたな…………」


 吐息より確かに、くちびるが耳に触れた。



 「ん…っ……………」
 ビクッとふるえて、ナナは薔のシャツを掴む。


 「血、ついたな………、」
 くちびるは、耳を伝って、


 「ナナ………、」


 とんでもなく甘い囁きは、吐息とともに吹きかけられた。




 「風呂、一緒に入らねーか?」

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