※第30話:Game(in Bathroom).27







 …――ほんとうの別れを知っている、あなただからこそ、

 その言葉には、かなしいほどにやさしく、

 何ものにも代え難い、

 ちからが満ちあふれていました。












 ―――――――…

 ギュ

 背中にまわした両手が、シャツのうえから、しなやかで細く、しっかりとしたつよいからだを抱きしめる。

 触れあうくちびるは、やわらかく、弾んで。




 「んん…っ………」

 夢中になって交わす熱いキスは、窒息まで、あとわずかか。
 それでも構わないと想えるほどに、曲げた足は縺れあう。



 「は…ぁっ……………」

 いったん離れ、どのくらいのキスだったか定かではないが、麻痺した感覚は、まだ足りないと求め全身を支配してゆく。


 「はあっ…………はぁっ………………」
 ナナは火照って、熱く激しい息を吐いており。

 「はぁ…………っ……」
 ぼんやりと彼女が見上げる薔も、瞳を閉じたまま、肩で深く息をしていた。


 「あ…の……………」
 苦しかったですか?、ナナはそう、問いかけようとした。
 しかし、こみ上げてくる熱い息が、まるでそれ以上の言葉を阻止しているかのようで。


 「はあ…っ…………はあっ…………………」
 言葉続かず、ただ荒く息をするばかりのナナのうえ。



 ス―――――…

 薔は、ゆっくり、瞳を開けた。




 「ナナ………」

 長い睫毛がかかる瞳は、それでもわかるほどにうるみを帯びている。

 「は……い……………」

 おぼろげに返事をした彼女を、愛おしそうに見つめ、



 「血…、吸ってくれないか?」




 薔は言った。









 「え…………?」

 息を上げてくる胸は、ドキリと脈打つ。

 「なぜに……です…か………………?」
 こないだ吸ったのは、水曜日。
 一週間も、経っていない。

 ちいさく聞き返したナナの、頬を両手でやわらかく挟み込み、

 「今、吸われたいんだ……、」

 薔は、かがみ込み、かおを近づけた。
 同時に甘い匂いと吐息も、ひどく近づいて、ナナを包み込んで。


 「キス…してるから、噛め………」

 やさしく囁くと、

 チュ―――――…

 先ほどとは違い、そっと這い入るように、薔はナナへくちづけた。



 「ん…っ…………」
 すこしだけナナはビクッとしたが、くちびるは噛めとばかりに、くちのなかへと入り込んでくる。


 プツ―――――…


 興奮もしていたためか、すぐに牙は出てきて、やわらかなくちびるを、刺したのだった。

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