第29話:Game(&Beside).26





 そのあと、必要なものを買ったりしたが、ナナは苦しくて仕方なかった。


 無理して笑ったりしていたが、あまりよく覚えていない。





 どうやって帰ってきたのか、どんなんで帰ってきたのかも、よくわからないが、気づくと薔のマンションへたどり着いていた。



 パタン―――――…

 リビングに入ると、

 トサッ

 薔は荷物を、床に置く。


 時刻は、17時になろうとしている。

 夕日が差し込む、部屋にて。


 花子は、きっと気を利かせたのであろう、お出迎えをしなかった。





 「いやぁ、ありがとうございま」
 「座れ。」

 無理だかしてお礼を言い終えるまえに、ナナはきつく言われた。

 「え?どうして、ですか?」
 ドキリとした彼女に、
 「いーから、はやくそこへ座れ。」
 有無を言わせず、薔は言い放つ。


 「は、はい……、」
 ゆっくりとナナが、ソファへ座ると、

 「どーしたんだ?おまえは、」
 そのまえにしゃがんで、覗き込むようにして薔は問いかけた。


 「なにが、ですか?」
 ナナは、涙をこらえるのに必死で。

 「途中からおまえ、おかしかったぞ?なに無理してんだ?」
 体勢はそのままで、薔は問うばかりなので、


 「あ、あの……、」


 ナナは、声を振り絞った。




 「わたしなんかと、一緒にいちゃ、ダメです……、」


 と。




 「なぜだ?」

 さらに問いかけた薔のまえ、


 ポタリ


 固めた両手には、涙が落ちる。



 「わたし、は、子供、できない、ん、で、家族、つくれ、なぃ、ん、です………、」
 肩をふるわして告げたナナに、

 「それがどーしたんだ?」
 声色をやさしくして、薔は問いかけた。


 「だ、からっ、あなた、に、ちゃんと、家族、つくって、あげら、れ、ないっ、んで、」
 涙は、ポタポタと、手の甲を伝わってゆく。

 「わたし、なん、か、じゃ、なくっ、て、ちゃんっ、と、子供、産める、ひとが、ぃ、いん、ですよ………、」

 握りしめた両手が、こころが、痛い。


 「わたし、もう、いなく、なる、っ、んで、う…っ、うっ……………」

 ナナは、肩をふるわせ泣きつづけようとした。


 すると、

 「おまえ、それ、本気か?」

 静かに、薔は問いかけた。



 「はい……、」

 答えたナナに、

 「おまえ以外の女と、幸せになれ、ってことか?」

 さらに彼は、つづける。


 「はい………、」

 消え入りそうに、頷いたナナ。


 の、

 ギュ

 腕を掴んで、薔は言った。



 「なれるわけねぇだろ。」





 「え…………?」
 ナナが涙に濡れた顔をあげて見た彼は、


 「なんでそんなこと、言うんだ?」



 今にも、泣き出しそうなのか、ひどく深く、かなしい顔をしていた。

[ 314/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る