第29話:Game(&Beside).26





 「こいつの話では、あと二時間後に日本を発つらしい。」

 突然、薔がナナに告げた。

 「え?では、あまり時間がないんですね!」
 慌てたナナは、必要以上にキョロキョロし始めた。
 しかし、たくさんの人のなかで、女の子の両親らしき人達を見つけることは困難だ。



 そして3人は、女の子が両親とはぐれたという場所までやって来た。

 広い公園で、おおきな噴水があった。


 「ここから、探しまわってたんですねぇ!」
 ナナは感心とともに、なんだか切なくなった。

 「健気ですねぇ!」
 そして女の子を見たが、普通にキャッキャとはしゃいでいた。


 「わあ!元気になってて、よかったぁ!」
 ナナはちょっと、驚いた。


 「案外、戻ってんじゃねーか?」
 こう言った薔と、公園を捜索しようと歩きだした瞬間、



 「Mary!」



 男性と女性の声が、同時に響いた。


 振り向くと、公園の入り口をご両親と思えるふたりが、ほぼ前のめりに走って通過してくるところだった。


 「Daddy!Mammy!」


 女の子の顔は、一段と明るさを増した。




 ゆっくりと、薔は女の子をおろして、

 駆け寄ってくる両親に、必死で女の子も走り寄っていった。



 父親が女の子を抱きかかえ、母親がそのあたまを撫でると、



 シャアァ―――――…



 噴水が、あがった。





 そよぐ風に、すこしの水滴が舞ってゆく。


 「よかったですねぇ!」
 感動したナナは、ホロリとしていた。
 「あぁ。」
 それだけ言った、薔をそっと見上げると、


 「……………、」


 彼はただ、黙って、再会した家族の姿を眺めていた。




 ナナの胸はキュウと締め付けられ、

 とっさに、

 ギュ――――…

 薔に抱きついていた。



 「どーした?」
 この質問に、抱きつくちからを強めたあと、


 (あ――――――…)


 ナナは、思ってしまった。




 (子供ができないわたしなんかと、このひとは一緒にいちゃダメなんだよ………。)

 パッ

 思ってしまった瞬間、離れた。



 「なんだ?」

 俯くナナの雰囲気をさとったのか、薔はこれ以上なにも言わなかった。




 ご両親は、何回も深々とあたまを下げて、女の子を真ん中に手を繋いで歩いていった。

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