第29話:Game(&Beside).26
「着れたか?」
試着室で着替えたナナに、外から薔が声を掛けた。
「着れましたが、あの、なんか、恥ずかしいんですけど…、」
モゴモゴ返事をするナナは、
「いーから、見せろ。」
はっきり言われてしまったので、
シャア――――…
ゆっくりと、カーテンを開けた。
真っ赤でもじもじするナナは、黒いキャミソールの上に総レースの白カーデを羽織り、デニムのショートパンツを履いていた。
こんな格好は、生まれてはじめてだった。
「いや、結果的にこれ、短いんですけど、」
デニムを引っ張りたいくらいのナナだが、
「なに言ってんだ?めちゃくちゃかわいいぞ?」
はっきりと言った薔は、微笑んだ。
赤くポカンとしたナナ。
「今日は、それ着てろ。」
彼はつづけて、
「靴も要るな。」
そう呟いた。
ということで、ナナは薔にちゃんとお洋服買ってもらったので、デートらしくなったうえで靴屋へ向かった。
やはりオシャレな、靴屋にて。
「わぁあ!なんだ!?あのひと、かっこよすぎるよ!」
店員さんや、ほかのお客さんは、そうひそひそと話してます。
ナナには聞こえてますが、薔には聞こえてません。
可愛らしいミュールなんかも、たくさんあるのだが。
「おまえ、足のサイズはいくつだ?」
こう聞いた薔に、
「え?23.5かと、」
ナナが答えると、
「ふーん、」
彼は、黒のハイカットスニーカーを手にとった。
ちゃんとした、ブランド物だった。
「これ履いてみろ。」
「ぇぇえ!?」
ハイカットスニーカーをはじめて見たナナは、戸惑った。
「サイズ見んだよ。」
こう言って差し出されたスニーカーを、恐る恐る履いてみると、
「おお!」
ぴったりだった。
「あぁ、やっぱ、かわいいな。」
薔はこう言いますのでね、ナナはそれも、買ってもらったんです。
「いや、しかし、紐をどうやったらいいのか、わかりません。」
買ってもらったものの、椅子に座ったナナは手こずるに手こずっていた。
すると、
「仕方ねぇな。」
スッ――――…
薔はしゃがんで、ナナの靴の紐を手際良く穴に通しはじめた。
こんな体勢は、はじめてだった。
「………………!!」
ナナはとにかく、真っ赤になっており。
「わぁあ!あのひと、まさか、どっかの国の王子さまなんじゃない!?」
まわりはひそひそと、こう話しておった。
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