第29話:Game(&Beside).26





 ナナだけ軽く朝食(作ったのは、いつものごとく薔です)を食べて、支度をしてから、マンションを出た。

 よく晴れた土曜日に、お出かけですね。

 ショッピング、つうのかな?






 バスの中にて。

 「とりあえず、服買うぞ?」
 ナナの隣で、薔は言います。

 「え?なぜに、ですか?」
 ナナはキョトンとしますがね。
 「そのカッコじゃ、デートになんねぇだろ?」
 薔はこう返してきたので、えぇ、よくよく考えてみるとナナは、彼のTシャツとジーンズを借りているんです。

 んでもって、薔は、白シャツにチノパンだった。
 着こなしているにも、ほどがあるほどに。

 「わぁあ!そうでしたぁ!いつも借りてしまい、スミマセン!」
 彼の雰囲気に戸惑うナナが、真っ赤でかしこまると、

 「おまえに似合う服、買ってやるよ。」

 彼女のあたまを撫でて、薔は言った。


 「……………!」
 ナナはすこし、ビクッとした。


 バスの中はクーラーが効いており、いい匂いがしていた。









 そして、バスを降りてしばらく歩いたふたりは、めちゃくちゃ洗練された佇まいのお店に、入った。
 オシャレだった。

 店のなかには、何人かの客がおり、カップルで来ている人達も、いた。


 働いているお姉さん方もなかなか綺麗で、それよりなにより、オシャレだった。




 「ぇえ?こんな、なんか高そうなとこ、いいですよぉ。」
 控えめに述べるナナに、

 「おまえ、俺をバカにしてんのか?」
 堂々と薔は、こう返してきた。

 …………ひぇぇえ!


 「いーから、とりあえず、好きなの選べ。」

 ということで、ふたりで手を繋いだりなんかして、お店の中を見てまわることにしたんですね。





 「どういった感じを、お探しですか?」
 ほどなくして、綺麗なお姉さんがニコニコと声を掛けてきた。
 こけしちゃんほどではなく、営業スマイルで。

 「え、えーと、」
 どぎまぎとするナナの隣で、
 「こいつに似合うモンだ。」
 普通に薔が答えた。


 「そうですよねぇ!」
 明るく言ったお姉さんは、顔をあげて、薔の顔をはじめてまじまじと見た。


 (おわぁあ!なに!?この男の子!!めちゃくちゃかっこいいなんてものじゃ、ないじゃん!)
 お姉さんは赤くなって、なんだかあたふたしていた。

 「あ、あの!」
 そしてそのまま、提案した。
 「こ、こちらのキャミワンピとか、かわいいですよぉ!」
 と。

 確かに可愛かったが、背中が開いているうえにけっこう短かった。

 (ぇぇぇぇえ!?)
 こんなセクシーなの、わたし着れない!と思ったナナの、隣にて。


 「んなエロいの、人前で着せられるか。」

 薔はあっさりと、言い放った。



 「ぎゃあ!そうですか!てか、え?人前で?」
 じゃあ、どんな前でならよろしいの?
 お姉さんは、こころに疑問を留めた。



 「オマエ、下がっていいぞ。こいつのは俺が決める。」
 そんなお姉さんに背を向けて、真っ赤なナナの手を引きながら、薔は立派に歩いていった。




 お姉さんは、ポカンとして、

 「え?まさか、どっかの国の王子さまとか?」

 と、呟いたのだった。

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