第29話:Game(&Beside).26





 どのくらい抱きしめあっていたのかは、定かではないが、気づくと時計は、10時をまわっていた。

 土曜日、です。



 「ナナ、」

 ベッドのうえで向き合ったまま、ふたりは会話をしております。

 「は、はい、」
 どぎまぎと返事をするナナに、

 「今日も出かけるぞ。」

 薔は、こう言ったんですね。

 「え?どこへ、ですか?」
 目をぱちくりさせたナナに、

 「おまえがいつでも来れるよう、色々揃えんだよ。」
 いつものように、言い放った薔。


 「ぇぇえ!?」
 真っ赤になったナナだが、


 「それとも、一緒に暮らすか?」


 この提案のあと、彼は微笑んだので、

 「………………!?」


 そうです、
 ナナ母の願望が叶うまで、あとわずか、かもしれません。







 リビングでは、花子が尻尾を振っていた。

 「おはよう、花子。」
 「花子ちゃん、おはようございます!」

 ふたり立て続けに、花子へ挨拶をすると、

 花子は尻尾を嬉しそうに振りながら、ちゃんとTシャツを着ている薔に飛びついた。


 (そりゃ、そうだよねぇ!)
 ナナは肩を落として、自分に言い聞かせる。



 花子は、しゃがんだご主人さまの頬を、尻尾をフサフサ振りながらペロペロと舐めており。


 そして、

 「花子、くすぐったい、」

 このとき、薔は、とても無邪気に笑っていた。



 ナナはとっさに、

 ガクン―――…

 真っ赤で腰を抜かした。




 「どーした?」
 花子を抱いたまま、問いかける彼に、なにも言うことができない。

 心臓が、おかしいくらいに速まってゆく。


 すると、

 スッ―――――…

 薔からそっと離れた花子が、尻尾を振りながらナナに歩み寄り、

 ペロ

 ナナの頬も、舐めた。





 ……か、感動!!

 感動ひとしきりのナナに、


 「よかったな、」


 さっきとおんなじ笑顔で、しゃがみながら薔が言ったので、


 「……………!!!!」

 花子に舐められながら、ナナはいつ気絶してもおかしくなかった。




 もし一緒に暮らしたら、ナナは一体、一日に何回気絶をするのだろうか?

 数えてみてもいいかもしれないが、そのまえに、慣れてほしいよ。
 なんとか、さ。

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