第2話:Taboo.2
ガラッ
薔は、化学室のドア(しかもこのときはなんのためらいもなく、教壇側のドア)を、勢いよく開けた。
すると、教師・生徒の全員が、そちらを直ちに見た。
視線をすべてはねのけて、薔はポケットに手を突っ込んだまま堂々と進んでゆく。
ナナは恐る恐る、そのあとをついて行った。
「授業はもうあと10分で終わるが、こんな時間までなにしてたんだい?」
いささか怒り気味の化学の先生(定年まであと5年の、髪と共に幸薄きおじさま)が問い詰めると、薔はすかさず言った。
「キスだ。血まみれだったが。」
な――――に――――――っ!?
言った当人を除いて、その場にいた全員が赤面した。
「ちょっ、やめてよ!先生、心臓止まるかと思っちゃったよ!」
胸元を苦しげにおさえる、気の毒な化学の先生。
「安心しろ。まだキスまでしかしてねーぞ?」
「ちょっ…………、学校で、それ以上はやめてよ…………………。学校以外でも、キミたちまだ15歳なんだから(※ナナは違います)なるべくなら、やめてよ………………。」
先生、泣きそうです。
「ねぇ、あのお方、珍しくギャグを言ってらっしゃるよ……。」
「う、うん、おそろしく笑えなくて、シュールなギャグだね………。」
クラスメートが、ひそひそと話し出したが、
「二度と笑えなくなりてーのか?」
ピタ
ひそひそ話は、ぴたりとおさまった。
ああ………………。
ナナは真っ赤になりながら、
(お願いですからわたしに、あったら入れる穴をください………………。)
と、願っていた。
「ま、まあ、いい。座りなさい。幸いにも先生、心臓止まらなかったから。」
「それはやたら残念なお知らせだな。」
……………………えぇっ?
「く、暮中、先生お前のそういうとこ、嫌いではないぞ。」
「逆に好かれようと、なんも嬉しくねーぞ?」
………………ひどい。
先生、なにかお前に、いけないこと、した……………?
…撃・沈………………。
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