第2話:Taboo.2



 ポタポタッ…

 鮮血が、床にしたたり落ちる。

「だぁあ!?」


 ナナは非常に飢えていたため、

 (もったいない!)

 これぞまさしく野性の本能が働き、

 バッ!

 這いつくばり、床に落ちた血を、


 舐めようとした。



 (ま、まだ、大丈夫よね?)
 そんな躊躇が彼女の脳裏をかすめたとき、
 バサッ
 おそらく薔は、ナナのノートとペンケースも、共に掴んできたのであろう、

 (わたしのノートぉ!?)

 を、床の血に被せるように、叩きつけたのだ。


 ナナは思わず顔を上げる。

「ちょっ、何す」
「3秒ルールだ。」

 ………は?
 今コイツ、なんて言った?

「………もういっかい、言ってくれる?」
「それにはおそろしいほどの、病原菌が付いてるがいーのか?」

 これ、あれだよね?
 もういっかいは、言ってくれてないよね?

「あのー、よくわからないんですけど、」
「んなモン舐めなくとも、ここにあんだろーが。」

 ナナは、目が点になる。
「………どこに、ですか?」
「ここだ。」

 そう言って薔は、自身のあかいくちびるをゆびさした。

 な―――――っ!!!?

「なななななに言ってんのアンタ!そんなとこどうやって舐めるって言うのよ!」
「お前の舌で舐めるに、決まってんだろ?」



 ……………唖然(プラス赤面)。




「お断りです!」
 ナナは這いつくばったまま、そっぽを向いた。
「お前、そんなんでよくヴァンパイアやってられるな。」
 ……ムカ。
「どーせ、堕ちこぼれなんだろ?」
 この言葉には、ガマンがならなかった。

「だから、バカにしないでってあれほど言っ――――…」

 グイッ

 怒りのあまり乗り出したからだ。

 薔は左手をナナの頭の後ろに回し、ムリヤリ、引き寄せた。そしてかがむように、自身の顔をナナの顔に近づける。

 チュ―――――…

 くちびるが、重なり合っていた。

「ん――――…っ!」


 やわらかな感触が伝わり、身震いをする。
 それと同時に、ほしくてほしくて仕方なかった、“血液”がナナの口のなかに流れ込んできた。



 ドクン――――――――…!!



 心臓が、張り裂けるほどに高鳴る。
 いや、しかし、これほどまでの高潮は、かつて体感したことがなかった。

 全身にちからが漲り、悦びが満ち溢れる。
 衝撃的な、事実。





 (コイツは、“上玉”だ――――…!)

[ 21/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る