第24話:Game(=Lovers…).22





 「あの、金魚………、」
 「なんだ?ほしかったのか?」
 「いえ、そうじゃなくて、スゴイなぁと………、」
 「あ?」
 こんな会話をしながら、ふたりが手をつないで歩いているときだった。


 「やだぁ!あの男の子、ヤバいくらいかっこいい!」
 めちゃくちゃ肌を露出させたギャル風の女性ふたりが、通りすぎるときに声をあげた。

 「ほんとだぁ!」
 女性らははしゃいでいたが、薔はまったく気にもとめていなかった。

 (おおお!?)
 ナナもあわてふためいたが、

 つぎの瞬間、


 「でもさぁ、女の子のほうは、かわいくなかったねぇ。」


 確かに聞こえた。


 「きっと妹さんとかじゃない?」
 「それならそれで、ぜんっぜん似てないよねぇ。」
 女性らはあははと笑っていたが、ナナは涙をこらえて、うつむいた。


 「でもそれなら、アタシたち狙えるかもぉ!」
 「ほんっとぉ!」
 笑ってとおりすぎていった女性らのあと、薔は黙って歩いていたが、ナナは気まずいうえに逃げ出したいくらいだった。



 すると、

 「…………………、」

 急に薔が、立ち止まったのだ。

 どうしたんだろう?と、涙こぼれるまえに見上げたナナに向かって、まえを向いたまま、

 「おまえ、金魚ほしいんだったな?」

 薔は問いかけた。


 「はい……………?」
 ナナが目をぱちくりさせると、
 「行くか。」
 彼女をグイと引っ張って、薔はもと来た道を戻りだした。

 「あ、あの…………、」
 わけがわからず、ナナはただ手をひかれて歩いていった。







 しばらく歩いて、屋台がすこし途切れた空間にて。

 「ちょっと、ヤダぁ!」

 なんと、先ほどのギャル風の女性らが、いかにも柄の悪いオトコふたりに、絡まれていたのだ。


 「そんなカッコしてんなら、誘ってるんだろぉ?」
 「酒くさっ!」
 どうやら、オトコらは酒を飲んでるようだ。

 「いやよいやよも、ナントカってなぁ。ホテル行こうぜぇ。」
 「ヤダってば!」

 この光景を見て、歩いてゆく人々は反対側へとよけていった。


 「いいだろぉ?」
 もはや、女性らの腕をつかみそうな勢いなのだが、


 「おい、」


 薔は、なんと、声をかけたのだ。



 「ドン引いてるうえに、やたらみっともねぇぞ?」




 なんで助けようとしてるのかナナにはわからなかったが、まぁ、このひとじつはやさしいからなぁ、と、想うようにしていた。


 「キャア―――ッ!」
 女性らは、喜んでいた。

 しかしやっぱりオトコどもは、
 「いや、ちょっと、じゃねーか、まぁ、美形だからって兄ちゃん、生意気なくち叩くんじゃねーぞぉ?」
 凄んで、近づいてきた。


 「しかも、女連れてんじゃねぇか。かっこいいとこ、見せつけたかったのかぁ?あん?」
 バカにしたように笑って、ひとりのオトコがTシャツをつかもうとした瞬間、

 ガッ――――…!

 その手首を、ものすごいちからでつかんで鋭く睨みつけて、薔は低い声で言った。



 「当たり前のことをかっこいいなどと認識するキサマらのが、逆に見せつけてぇんじゃねーのか?」



 「うぅっ……………!」
 ひとりは、青ざめ。
 「いたたたたた!いたい!いたいよ!」
 手首をつかまれたほうは、泣き出しそうに叫ぶ。


 「くだらねぇにもほどがあるが、どーせならブザマに逃げ帰れよ?」


 手をはなした薔は、やっぱり不敵に笑った。



 「うぎゃぁぁあっ……………!」
 青ざめるオトコと手首をおさえるオトコは、転がるようにして逃げ出していった。

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