第24話:Game(=Lovers…).22





 門にスタンバイ。
 この夜は、雲も出ておらず、青い夜空には星がちらほらきらめいており。

 3分前に、薔が立派に歩いてきました。
 彼の格好は、ラフな感じで、黒いTシャツにジーンズだった。
 着こなしているにも、ほどがあるほどであるが。


 「こここここんばんは!」
 ナナは真っ赤になり、ぺこりとあたまを下げた。

 すると、

 「あぁ、やはり、思った通りだな。」

 薔はナナのほおに触れて、呟くように告げた。



 「めちゃくちゃかわいいな、おまえ。」



 心臓、限界(by.言わずもがな)。




 「行くぞ。」
 ポカンと真っ赤のナナの手をひいて、薔は堂々と歩き出した。









 はい、初デートは、夏祭りでした。
 メインの神社へとつづく道には、盆明かりがともり、おおくの屋台が出てにぎわっており。

 はじめての夏祭りに、ナナはやたら、はしゃいでいた。





 金魚すくい、にて。

 「すごいですね!こんな狭いなかに、金魚がいっぱいですよ!はじめて見ました!」
 しゃがんではしゃぎつづけるナナだが、
 「おまえ、金魚飼ってんじゃねーのか?」
 おなじくしゃがんだ薔に、イタいとこをつかれた。


 ……そう言えばぁ!


 「え、いや、はい!こんなたくさんを、はじめて見ました、という意味です!」
 「ふーん、」
 こんな会話をしていると、

 「いやいやぁ、お嬢さん!」
 色黒ではちまきをしたテキ屋のおじちゃんが、笑いながらナナに大声をかけた。


 「彼氏、めちゃくちゃイケメンだねぇ!イケメンにも、ほどがあるねぇ!」

 と。


 ナナは真っ赤になったが、まわりにはしっかり聞こえたので、
 「ほ、本当だ………!」
 「すごぉ!」
 とたんにざわめきだした。


 すると、薔は、

 「おい、オヤジ、」

 至って落ち着いて、おじちゃんに問いかけた。



 「キサマも金魚になるか?」



 ぇぇぇぇぇぇぇぇええ!?

 (なにこの子!?褒められた側なのに、すんごいこと聞いてきたよ!?)
 おじちゃんは青ざめたあと、
 「う、ううん!よくわからないが、おじちゃんはイケナイことを言っちゃったみたいだから、金魚にされるまえに、いっそすくってもらおう!」
 と、ふるえながら述べて、ふたつの椀とポイを差し出した。


 「すくっておくれ!この金魚たちを!お詫びのしるしだ、お代はいらねぇ!」


 流れでふたりは、金魚すくいをすることになった。


 はじめての金魚すくいで、ナナは一匹もすくうことなく、ポイが破けた。

 んでもって、彼女のとなりで、すずしげに難なく、薔はすでに10匹ほどすくっていた。


 「すごいですね!どうやったんですかぁ!?」
 「コツだ。」

 ………………こつ?

 はしゃぐナナと落ち着き払った薔のまえで、おじちゃんはあんぐりと口を開けていた。
 椀を変えたりしながら、30匹目あたりで、ギャラリーができはじめ。
 そして、ポイを破くことなく、50匹すくった時点で薔はやめた。


 「飽きたな。」
 「ぇぇぇぇぇぇえ!?」
 まわりは仰天した。
 気づくとけっこう、人が集まっていた。

 「こいつにはすでに、餌をやりすぎたくなるほどのかわいい金魚がいてな。俺にも花子がいる、すくった金魚は、ほしいヤツらにくれてやれ。」
 「えーっ!?いらないのぉ!?」
 のけぞる、おじちゃん。

 「いらねぇんじゃねーよ。需要と供給だ。」
 「はい………………?」
 キョトンとするおじちゃんのまえで、薔はナナとともに立ちあがった。


 「ここまで破れねぇとは、なかなかやる店だな。」


 そう残して、真っ赤のナナの手を引いて、薔は立派に歩いていきました。



 パチパチパチパチ……!

 拍手の渦が巻き起こったあと、

 「オヤジ、その金魚、記念に一匹くれ!」
 「あたしにも!」
 「アタシは、すくってみたぁい!」

 店が大繁盛したおじちゃんは、

 (ありがたい!お名前うかがっておけばよかったぁ!)

 感涙にむせていた。

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